さて、ここで話題を文学に戻そう。韓国のフェミニズム文学はもちろん今に誕生したわけではない。フェミニズム文学とあえて範疇化するかどうかは措くとしても、女性作家は昔から大勢いた。
文学史を繙(ひもと)くと、韓国フェミニズム文学の濫觴(らんしょう)は、1920年代前後の「新女性」と呼ばれた書き手たちの作品とされる。キム・ミョンスン、キム・イリョプ、ナ・ヘソクといった作家たちが女性解放や自由恋愛などを描写した。キム・イリョプは僧侶、ナ・ヘソクは画家でもあった。
その後、国連が1975年を「国際婦人年」としたことと同期するような形で、韓国でも女性学への人々の関心が醸成され、1977年には梨花女子大学に女性学講座が開設される。1980年代以降は、フェミニズム小説三部作を書いたパク・ワンソ、さらには、ヤン・グィジャ、コン・ジヨン、シン・ギョンスクなどといった女性作家が注目を浴びるようになり、なかんずく、コン・ジヨンの『サイの角のようにひとりで行け』はフェミニズム小説としてよく知られている。
そして、現在は、1970年代~1980年代生まれの女性作家の活躍が際立つ時代である。日本語訳が刊行されている70、80年代生まれの女性作家の一部を挙げると、次の通りである。
福岡の出版社書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)は「韓国女性文学シリーズ」という女性作家に特化した叢書を設け、キム・インスクの『アンニョン、エレナ』を嚆矢(こうし)として、2022年2月現在、10冊もの作品の日本語訳を開版している。上に挙げたいくつかの作品もこのシリーズに含まれ、来月にはペク・スリンの『夏のヴィラ』の日本語訳が刊行される。
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