セレンディピティ感度の高い人は世界をこう見る 「ウェーターからCEOまで」成功者が持つ視点

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私は今でも、自分にとって人生最悪の判断をしたときのことをはっきりと覚えている。仲間の反対を押し切って、共同創設者となった組織への追加出資を受け入れたのだ。

当時、私の理性はゴーサインを出していた。組織は財政的にも戦略的にも追い詰められており、書類上は出資を受け入れるしか存続の道はないように思えた。一方で私の直感は、思いとどまれと叫んでいた。

追加出資を受けた失敗から学んだこと

出資当初はうまくいったが、結局、投資家と共同創設者兼経営陣の思惑が一致していなかったことが明らかになり、こじれた末に投資家とはたもとを分かつことになった。

追加出資など初めからうまくいかないと思っていた仲間の共同創設者たちには、不要な苦労をかけることになった。

その後しばらく、私は自らの判断ミスにとらわれていた。モヤモヤした気持ちと折り合いがつけられず、この件について仲間と話し合うこともできなかった。

今でもあの判断を肯定はできないし、もう一度やり直せるとしたら違う判断をするだろう(後知恵バイアスを抜きにしても)。

「数字上の損得ではなく、正しいと思ったことをする」という自分がいちばん大切にしている信条を、必ずしも実践できていないことを痛感させられた経験だった。

当時は私自身と組織の存在を揺るがすような事態だと思ったが、最終的にはすばらしい学習の機会となった。同じような判断を迫られた人の気持ちがよくわかるようになったし、白黒はっきりした判断などないことも知った。世界をそれまでと違う「枠組み」で見られるようになった。

今では危機に直面すると、あのときのことを思い出し、できるかぎり情報を集めたうえで最後は「情報に基づく直感」を信じるようにしている。

それによって当初はうまくいくと思えなくても、いずれどうにかなるという安心感が出てくる。また自分の判断に何が影響を与えているかが理解できるし、自分の不安や願望をはっきりわかっていないと他人に影響されやすくなることも自覚できる。

クリスチャン・ブッシュ サンドボックス・ネットワーク共同創設者

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Christian Busch

ニューヨーク大学(NYU)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で、パーパス・ドリブン・リーダーシップ、イノベーション、アントレプレナーシップを教える。LSEでイノベーション・アンド・コクリエーション・ラボの共同ディレクターとコースリーダーを務めたのち、NYUではセンター・フォー・グローバル・アフェアーズ(CGA)のグローバル・エコノミー・プログラムのディレクターを務める。LSEにて博士号(Ph.D.)取得。20カ国以上で活動する若手イノベーターのコミュニティであるサンドボックス・ネットワーク、強い影響力を持つリーダーの集まりであるリーダーズ・オン・パーパスの共同創設者。

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