結果をちゃんと出す人とデキない人の決定的な差 真実を見抜き、相手の心をとらえる目の付け所

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会長と呼ばれる人が、商品やシステムの説明をする。いいスーツを着て、立て板に水の喋りである。だが、成功者の生の声を聞いてもらいます、と言って彼が出したCDラジカセが、すごく古いタイプだったのである。最先端の商品を売る人が、そんなに古い形のラジカセを使うはずがない。恐らく、リサイクルショップで買ったものだろう。そこでケチるようなビジネスではないでしょう、と突っ込みを入れたくなる。

そのつもりでパンフレットを見ると、一見しゃれたデザイナーを使っているようだが、ちょっとダサい。一流のデザイン会社に頼めば、微妙な「偽物臭さ」が出ないものである。

違和感は、真実を見抜くためのメッセージ

また、会場にいるのはほとんどサクラだから、会長が「この商品がいかにすごいか」を説明したタイミングで、ほーっと感動した感じでため息をつく。中には、そこまで深く感動するところかな、とこちらが微妙に感じる人もいる。まさに、オーバーアクト(演技過剰)である。

私は演出家だから、違和感を特に持つ。だが、初めてその場にいて、その商品にも詳しくなければ、「そんなに感動をする人もいるのかな」と自分を納得させることもできる。

やがて、狭い会場に人が寿司詰めになっているから、酸欠になってくる。ボーッとしてきて判断力が鈍ってくる。主催者はそれが狙いだが、「空気が悪くなってきたから、窓を開けて換気をしましょう」と誰も言わないことがおかしい、と気づけるだろうか。

私は、そこらあたりで退散した。後は、1人ひとり説得していくのだろうと思ったからである。その場で詐欺に引っかかった人もいるのだろうな、アドバイスもしなくて申し訳ないことをしたと、思わないでもない。しかし、あんな商売の邪魔をしたら、現場でどんな目に遭うかわからないものだ。静かに退散するのが正解だったろう。

書き始めるとキリがないが、小さな違和感のたくさんある会場ではあった。

だが、こうしたことは珍しくない。例えばベンチャー企業を取材して「儲かっているという割に、このロゴマークはチープすぎないか」「待合室のソファーがこれほど高級品である必要があるだろうか」などと思うこともある。そうした違和感は、真実を見抜くためのメッセージであることが多いのだ。

発信するために最も大事なこと

仕事では「伝える」ことが大事だとよくいわれる。しかし、ふだんのコミュニケーションできちんと発信していない人が、いきなりビジネスの場で発信できるはずもない。そうした人の多くが、「何を話せばいいのかわからない」「自分にはなすことがあるのだろうか」と考えてしまうはずだ。

笑い話だが、英会話を勉強して、十分に「話す力」は付いたのだが「話すことがないので、アメリカに行っても、お喋りはできなかった」という人は実際にいる。

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