セールスフォース、「日本が自立」の狙いとは? 中長期的な成長を睨んだ投資を加速

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――しかし、振り返ってみればIBMもまさに30年タームで考えれば、典型的なイノベーティブな企業だったわけですよね? System/360などは、ものすごいイノベーションです。お客さんと一緒にイノベーションをやっていくという点で似ている面もあるのでは?

私自身、IBMと比較しながら、セールスフォースを考えることが多いが、やはりIBMはこの業界の中でリーダーだったんだ、と感じることが多い。というのも、IBMもやはり真っ先にマーケットを作ってきた会社だから。

ちょうど私がニューヨークに赴任していた時のことだが、「eビジネス」という言葉を作ったのはIBM。で、あの当時、IBMはまだ汎用機をメインにしていて、これでいいのかとかと議論している最中に、もうそうじゃないんだと、これからeビジネスだと、インターネット時代のeビジネスを主唱し、かつそれを登録商標しなかった。全員でeビジネスという言葉を使って、一気にeビジネス時代を開こうとした。IBMも新しいデマンドを創成するということをやってきたので、そこのDNAは非常に似ている。

売るための仕組みが大きく変わっていく

小出伸一(こいで しんいち)●1981年日本アイ・ビー・エム入社。ハードウェア、アウトソーシング、テクニカルサービス、ファイナンシャルサービスの各事業の責任者を務め、2002年には取締役に就任。日本アイ・ビー・エムに24年間在籍後、ソフトバンクテレコム(旧: 日本テレコム)に入社、副社長兼COOに就任。2007年より7年間、日本ヒューレット・パッカード代表取締役社長執行役員として、同社のハードウェア、ソフトウェア、サービスの各事業ならびに全業務を統括。2014年4月より、株式会社セールスフォース・ドットコムの代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に就任。本社のエグゼクティブ・バイス・プレジデントを兼務

――ただクラウドになると、一件あたりの金額が圧倒的に小さい。IBM時代以上に、多くの企業が顧客ターゲットになると思います。売るための仕組みがかなり違う。

まったく、といっていいほど違う。ポイントは2つあって、まずは何と言っても、導入スピード。だから経営面で痛切に感じるのが、先ほども説明したように、スピードではなくてアジャイルであることが必要だ。もう1点が、アプローチの違い。IBMで我々は「ロジカル・セリング・プロセス」と言って、まずはお客様の経営課題の課題をまず聞きましょうということをやってきた。そして課題を解決しましょうと。そこにコンピュータがうまい形で収まれば、それがIBMの提案だという点で、ソリューション・アプローチだった。

ところがセールスフォースのアプローチは、課題を解決するだけでなく、それより先のこと、お客様は将来何になりたいですかと、何をしたいですかと、その実現のために我々はこういうお手伝いができますよ、というアプローチをする。同じカスタマー・サクセスというものを求めながらも、ちょっとステージが違う。

――ただ単に、今あるシステムをクラウドに置き換えるというような仕事ではないんだ、と。

そうではなくて、課題解決というよりも、お客様の先の目標を一緒に実現しましょうというようなアプローチをしている。そこは、ソリューションではなくイノベーションタイプのアプローチではないかなと思います。お客様のビジョンを一緒に実現しましょう、という形になります。

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