セールスフォース、「日本が自立」の狙いとは? 中長期的な成長を睨んだ投資を加速

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――今までとは、どう違うのですか。

これまではすべての部門がアメリカの部門に直結していた。例えばマーケティング部門であれば本社のマーケティング部門の承認を取ってから、法人営業であれば本社の法人営業部門に価格などの承認を得てからアクションする、という形だった。

それが私の就任とともに変わった。私が全世界の子会社の中で、唯一CEOというタイトルを使っていいというふうになり、私が全部権限を持つ形となった。私が、「イエス」と言えばイエス。結果的にむこうのCEOであるマークに対し、こういう判断をしたよと報告するだけでいいので、経営のスピードが圧倒的に変わる。

ビジネス側での変更点もある。日本のお客様は、CRM、コンタクトセンターなどのソリューション別のメニューとは別に、インダストリーカット(産業ごと)のメニューも求めている。金融、製造、流通、テレコムのように産業別のソリューションを、きちんとお客様に提供できるようにしていく。

とはいえ、自前で全てのソリューションを作れるわけではない。まだまだ小さい企業ですから、それは無理。そうすると次に重要になっているのは、パートナー戦略になる。インダストリーカットで売る、ということは、パートナーとの提携強化なくしてはできない。しかも、それを日本の商流に乗せないといけない。そうなるとやっぱり日本にすべての権限が委譲された今の体制は、非常にやりやすくなる。

1970年代の日本IBMのようなスタイル

――マイクロソフトやIBMなどでもそうですが、今は日本における機能は分解されつつありますよね。

それが逆。逆ブレをさせたところがすごいところ。私が入社する時に、そういうモデルをやるからCEOをやらないかということで話が来たので、本社も全面的にサポートしてくれている。

マークにしてみれば、今回の日本のケースが成功すれば、ドイツでもカナダでも横展開したいわけです。ただ、なんでそれをやっているかと言うと、日本が好きだから、とかそういうことではない。さっき言ったように、アジャイルでなければならない。いちいち本社のご承認をいただき、箸の上げ下げまでご指導ご鞭撻いただくというモデルでは成り立たない、という判断がある。

アジャイルな経営判断をサポートする新しい組織モデルとか、ビジネスモデルが必要になって、もう一度、昔のIBMが1970年代やっていたような、日本にすべての権限を委譲するというようなモデルが出現したという、ご理解でいいのではないかと思う。

ただ、やり方は工夫が必要。下手をするとグローバルからは、「ああ、日本が勝手にやっている」と見られちゃう。しっかりグローバルとインターロックをしながら日本のユニークさを出すという、そのバランスが必要で、それこそが本来のグローカルというモデルだと思う。

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