HRプロ株式会社
今回は就職ナビについて、学生と企業の双方の活用度を比較してみる。前回は【採用で重視したメディア、ツール】を紹介した。中小企業(101~300名)では就職ナビは81.3%と1位、大企業(5001名以上)では72.2%と2位だった。就職ナビといっても、たくさんある。定番になっているもの、コストパフォーマンスのいいもの、特殊なメニューが充実しているもの…、とそれぞれ特徴がある。今回は学生、企業のアンケートデータから現在の就職ナビについて研究してみたい。
●1990年代半ばから始まった就職ナビ
現在の採活、就活では、Webを使うことが常識になっている。そしてその母艦に位置するのが就職ナビだ。採用情報を就職ナビに掲載しなければ、人事がどんなに熱い思いを持っていても学生は集まらない。どんなにすぐれた自社採用ホームページを作っても見に来てくれない。プレエントリーしてくれる学生もいないし、採用セミナーの開催を宣伝しようにも学生には伝わらない。学生も似たようなものだ。業界研究、企業選び、プレエントリー、セミナー参加と、ほとんどの就活プロセスを就職ナビで行う。
ここで採用のプロに知っておいてもらいたいことがある。就職ナビの歴史は浅いと言うことだ。始まったのは1990年代半ば。現在の『マイナビ』『リクナビ』の前身となるサイトが相次いで開設された。しかし当時はメジャーではなかった。
1990年代前半はオフィスでも大学でもパソコンは少なく、1人に1台が当たり前になっていくのは後半のことだ。例外は慶応大学の湘南藤沢キャンパスくらいで、他大学では導入事例はほとんどなかった。
1995年にマイクロソフトの「Windows95」が発売されて、Webブラウザや通信ソフトがプレインストールされるなど、ようやくインターネットを簡単に使う環境が整った。しかし当時のインターネット接続はダイアルアップ(電話回線)。利用には制約があった。また当時の就職ナビは12月オープンで、まだまだ紙のメディアの天下だった。
●「就活」という言葉が登場した頃に万能のWeb就活・採活が成立
いつから今日のようなWeb就活が万能になったのかと言えば、2000年の頃からだろう。まずドコモがiモードでメールの送受信、Web閲覧をできるようにしたのが1999年。そしてパソコンでADSL、光回線でブロードバンド接続ができるようになったのが2000年頃から。「就職活動」に代わって「就活」という言葉が登場するのもこの頃だ。このあたりから本格的なWeb就活が普及し始めた。この間に就職ナビのオープンは少しずつ早まり、10月1日になった。多くの企業では10月1日に内定式を行って、翌々年の採用活動を開始するので、これ以上に早まることはない。
1995年以前の採用活動、就職活動は、大学訪問、研究室訪問など、学生と企業が対面することも多かったが、Web時代になると、複数企業へのエントリーが容易であり、企業が希望しないほど大量のエントリーが集まる。その中から絞り込むのは容易ではないから、Webテストで足切りすることも一般的な採用手法になった。
Web就活・採活では個性が見えない。同じ時期に同じ行動を取ることになり画一化している。しかし文明の利器というものは、便利さを味わうと元には戻れない。だから就職ナビの使い方が学生にとっても企業にとっても重要になるのだ。
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