JALとANAを分析する 収益力に大きな差がついた、航空大手2社

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注目は、2010年の破綻時にとられた優遇措置の影響です。一つは法人税の免除ですが、この期は19億円しか支払っていません。一般的に、限界税率が40%近くあることを考えますと、経常利益が169億円出ているわけですから、本来ならば70億円程度計上しなければなりません。これが優遇措置によって免除されているのです。

もう一つは、借入金や社債などの有利子負債が、破綻時に10分の1以下まで棒引きされ、支払利息がかなり抑えられていることです。貸借対照表から有利子負債を計算してみましょう。有利子負債は、借入金からリース債務まで含まれ、合計で1217億円になります。そして、損益計算書の営業外費用にある支払利息は、5億円弱です。

JALは本業が好調であることに加え、優遇措置の好影響が重なり、高収益を維持しているのです。

貸借対照表から自己資本比率(純資産÷資産)を計算すると、49.6%となります。十分高い水準ですから、安全性にも全く問題ありません。破綻前は12%程度しかなかったことを考えると、大きく財務内容が改善したことが分かります。

事業規模は国内No.1だが、低収益に苦しむANA

続いて、ANAの同年同四半期の決算内容を見ていきましょう。JALのスリム化により、規模的には国内1位となったANAですが、収益力という面ではJALに大きく引き離されていると感じます。

損益計算書(10ページ参照)から業績を見ていきますと、売上高は前年同期より10.0%増の3868億円。JALの規模(営業収益3070億円)と比較すると、ANAの方が26%ほど大きいことが分かります。

次ページJALとANAはどこで収益力の差がついたのか
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