JALは破綻処理をした後、京セラ創業者の稲盛和夫氏の指揮によって、全従業員にフィロソフィを浸透させ、徹底したコストカットとサービス向上に努めました。お客様は敏感ですから、こうしたサービスの向上が利用率を改善させ、収益力の強化につながったのではないでしょうか。
さらに、JALには先に述べたような優遇措置がありますから、ANAにとって不利な状況が続いています。
先ほどと同様に、貸借対照表からANAの有利子負債を計算しますと、8572億円にものぼります。JALは1200億円ですから、ANAはこの7倍近い有利子負債を抱えているのです。そして、ANAの支払利息は35億円。JALは4億円しかありませんから、ここでも収益力に差が出てきてしまいます。
その結果、ANAはかろうじて営業利益は確保しましたが、支払利息等を加味した経常利益段階では、25億円の損失を計上しました。ただ、同社の自己資本比率は34.5%ありますから、安全性には全く問題はありません。
ANAは2012年に、燃費が良くて長距離飛行が可能な最新型航空機B787を17機購入しました。この航空機は、度重なるトラブルにより、利用停止を余儀なくされましたが、すでに同機はほぼフル稼働していますから、この影響は解消されています。
ただ、この問題を抜きにしても、ANAは高コスト体質になってしまっています。「売上高でJALを抜く」という、かねてからの悲願を達成しても、収益の確保に苦慮しているのです。
スカイマークのA380購入問題の影響にも注目
今のところ、JALとANAには関係ありませんが、今後はスカイマークのA380購入問題が影響してくる可能性があります。
2011年、スカイマークが、航空機メーカーのエアバスから、6機の超大型機A380を総額1915億円で購入する契約を結びました。ところが、支払いが滞ったことで、契約が解除されてしまったのです。
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