日本の金融システムに対する信用が、どの時点で失われ、預金封鎖やハイパーインフレ、ついには財政破綻が起こるのか。私には、日本の財政赤字が膨らんでいく様子は、まるで「肝試し」に見えます。はっきり言って、破綻のきっかけは誰にも分かりません。ただ、ある程度目安となる指標がいくつかあります。4つのチェックポイントをみていきましょう。
チェックポイント① 経常収支の赤字が続く
一つめは経常収支です。これは、海外とのモノやサービスなどの取引によって生じた収支のこと。主に「貿易収支(輸出額と輸入額の差額)」と「第一所得収支(旧・所得収支。金利や配当金などのやり取り)」で占められます。他に、サービス収支やODA(政府開発援助)などがありますが、主なものは先に挙げた2つです。
日本は財政赤字が1000兆円以上、GDP比で200%を超える膨大な借金国です。それにもかかわらず破綻しないのは、「日本は海外から稼げる国だから、借金を返せるだろう」という信用があるからです。つまり、経常黒字を稼いでいるということです。
大震災を境に経常黒字が大幅に減少
ところが、経常収支の赤字が続くようになると、市場から「日本は海外から稼げなくなったから、借金を返せないのではないか」と見なされ、日本国債の信認が失われます。その結果、日本国債が暴落する可能性が出てくるのです。今のところ、日本は経常黒字を稼いでいますが、一時は油断できない状況に陥りました。2011年3月11日に起こった東日本大震災を境に、経常黒字が大幅に減少したのです。
2010年は18兆2687億円の黒字を稼いでいましたが、2011年は8兆1852億円と半分以下にまで減ってしまいました。以降も震災前の水準に戻っていません。その主な原因は、震災によって液化天然ガス(LNG)の輸入が増加したことと、その後の円高が相まって輸出が減少、さらには国内産業の空洞化が一気に進んだことです。
震災により東北地方にある工場の多くが被災したことで、自動車や半導体、紙などの産業のサプライチェーンが分断されました。これらの産業は、ダメージを受けた分のすべてを東北地方で復旧させず、一部を海外に移転したのです。また、当時の急速な円高も企業の海外進出を加速させ、輸出も低迷して貿易赤字が膨らんでしまいました。
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