1980年代、日本より一足先にROE重視の傾向が強まっていた米国では、収益性や資本効率を求めるあまり、人件費の抑制やリストラを進める企業もありました。もともと米国は、法律的にも解雇(レイオフ)を行いやすいこともあり、景気が悪くなるとすぐに従業員を解雇し、逆に回復すればすぐに雇用を増やす傾向がありますが、その点を差し引いても過剰なリストラを行う企業があったのです。前回解説しましたが、ROEを手っ取り早く上げるためには、自社株買いをすることも有効です。現在、米国では過剰な自社株買いが問題となり、安全性を犠牲にしてまで株主を優遇する行為に批判が出ています。最終回の今回は行き過ぎたROE経営の問題点について取り上げます。
第1回 いまROEが注目を集めるようになった裏事情
第2回 あの会社も実践!ROEを高める「5つの手法」
1980年代当時、米国企業の中には、ROEを高めるために利益を底上げしようと、必要な研究開発費用や宣伝・営業費用を減らしてしまったり、過度な人員のリストラを行うケースが見られました。
NY市場の株高を支える露骨な自社株買い
また、過度な自社株買いを行う会社もあり、中には借金をしてまで自社の株式を買い入れるケースもありました。そんなことをすると、場合によっては安全性が大幅に損なわれますから、健全な経営ができなくなる恐れがあります。さらには、自社株買いによって株価を上げる会社が増えてくると、市場や株価が歪み、投資家から市場に対する不信感が生じかねません。
このような露骨な自社株買いは、2008年に起こったリーマンショック後にいったん減少したものの、ここ最近は再びその規模が拡大してきているのです。いまやNY市場の株高を支えている最大の要因が、この企業による自社株買いだとまで言われています。
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