いまROEが注目を集めるようになった裏事情 ROE経営は本当に日本企業を強くするのか

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株主の発言力が増してきたことを受けて、ROE向上を経営目標に掲げる企業が増えてきた(撮影:今井康一)
「ROE(自己資本利益率)」「自社株買い」「M&A」……1年くらい前から、新聞やビジネス誌の見出しに、このような言葉を多く見かけるようになりました。いま業種を問わず多くの上場企業がROEの目標を定めています。
なぜ、最近になって「ROE」が注目されているのでしょうか。そもそも、ROEとは何でしょうか。ROE重視の背景から企業の動向、そこから浮かび上がる問題点について考えたいと思います。今回は3回でお届けする連載の第1回です。

バブル崩壊以降、経営者たちは株主に目を向け始めた

もともと日本の経営者たちは、ROEを軽視していたわけではありませんでしたが、1980年代のバブル期までは、日本企業の株式の多くは、取引のある会社や銀行が持っていましたので、いわば「仲間同士」が株式を持ち合っている状況でした。いわゆる「株式持合構造」です。みんな旧知の仲ですから、お互いの経営についてうるさいことは言いません。

その結果、日本企業は内部志向が強まり、当然ですが、経営者たちは株主への還元についてあまり考えておらず、ガバナンスが効いていない会社も少なくありませんでした。そういった背景から、「会社は株主のことを考えていない」と長い間指摘され続けてきたのです。

ところが、1990年代後半あたりから状況が変わり始めました。バブル崩壊によって日本企業、とくに銀行が日本株を手放し、外国人投資家が受け皿となったのです。

こうして外国人投資家の保有比率が高まったことで、株主の発言力が増していきました。株主から会社に向けて「もっと収益率を上げてほしい」「積極的に投資をして、利益を追求してほしい」「ガバナンスを強化すべきだ」などといった要求が強まってきたのです。そこで企業は、ようやく株主に目を向け始めました。

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