いまROEが注目を集めるようになった裏事情 ROE経営は本当に日本企業を強くするのか

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では、会社の利益効率を見るためには、何を目標に経営すればいいのでしょうか。それが「ROE(自己資本利益率)」でした。企業は、株主に目を向けるという目的で、株主が企業に預けているお金である「自己資本(株主資本等)」に対するリターンであるROE(純利益÷自己資本)を高めようと考え始めたのです。

こういった流れの中、2014年にいっそうROEが注目される大きなきっかけとなった出来事がありました。その年の8月、経済産業省が通称「伊藤レポート」を公表したのです。

伊藤レポートが提示したROE8%の目標数字

これは、経済産業省が中心となって進めた「持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築〜」というプロジェクトの中でつくられたものです。約1年間にわたって、経済学者やアナリスト、あらゆる業種の経営者などの有識者たちが議論を重ね、座長の一橋大学大学院教授・伊藤邦雄氏がまとめあげました。

日本経済が長期的に低迷している原因について、詳細に分析しています。

「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資かの望ましい関係構築~」プロジェクトの座長を務めた一橋大学の伊藤邦雄特任教授(撮影:尾形文繁)

日本経済は、バブルが崩壊した1990年以降急速に冷え込み、長い間、低成長が続いていました。2014年度の名目国内総生産(GDP)は490.8兆円であり、これは1992年度の490.1兆円とほぼ同水準です。この約20年間、我が国の経済は全く成長していないと言っても過言ではありません。

それには、企業の業績も大きく関係しており、伊藤レポートは、その原因は大きく分けて2つあると指摘しています。1つは大企業の利益効率が悪いこと。もう1つは、株主と会社との対話が不十分であることです。そこで同レポートでは、次のような目標を提示しました。

「収益率(=稼ぐ力)を向上させるために、企業はROE8%を目指す」

これに関連して、金融庁が中心となり2つのルールを策定しました。機関投資家と投資先企業との対話を促す「日本版スチュワードシップ・コード」と、会社のガバナンスを強化するための「コーポレートガバナンス・コード」です。

日本版スチュワードシップ・コード」とは、ひと言で言えば、機関投資家に向けてつくられた行動規範です。「日本版」という言葉がついているのは、元々は英国で策定されたスチュワードシップ・コードを参考にしてつくられているからです。

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