短期利益重視の「やりすぎ」ROE経営の弊害 あのヒラリーも四半期資本主義を痛烈批判

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ROEを高めることは、けっして悪いことではありません。ただ、企業経営の本質を忘れ、あまりにも株主を重視しすぎてしまうと、本来の目的である「社会に求められる商品やサービスの提供」や「働く人の幸せ」が二の次になってしまい、「中長期的な成長」を目指す健全な経営ができなくなる可能性があることを忘れてはいけません。

では、なぜ、米国の企業はそんなにも株主の利益を重視した経営を行うのでしょうか。なぜ、もっと従業員や顧客サービスに重きを置いた経営を行えないのでしょうか。

「物言う投資家」の圧力に振り回される米国企業

最大の理由は、「物言う株主」の存在と、株主からの圧力で経営者の退任も余儀なくされてしまうという「資本市場のルール」にあると言えます。

「株主は四半期決算の1株利益にしか関心がない。その圧力に押しつぶされそうだ――」

2008年9月に破綻した米大手証券リーマン・ブラザーズのリチャード・ファルド最高経営責任者(CEO)は、よく周囲にこう漏らしていたと言います。リーマン・ブラザーズの株主たちはゴールドマン・サックスと対比した決算内容や株価を比較し、経営者にプレッシャーをかけ続けたのです。

その結果、リーマン・ブラザーズは実力以上の利益を追求するようになり、リスクの高い経営に走っていってしまったのです。米国の資本市場において、経営者に強いプレッシャーをかける株主=いわゆる「物言う株主」の影響力は、リーマンショック以降もますます増大しています。

米ヤフー社のトップを退陣に追い込んだダニエル・ローブ氏や、最近では、アップル社に強い圧力をかけていることで話題となったデービット・アインホーン氏など、巨大企業を相手に一歩もひけをとらない「物言う株主」の言動がメディアをにぎわせています。

ちなみに、アップル社に対するアインホーン氏の主張は、アップル社の手元資金の使い方が適切でない、というものでした。アップル社は、かつて90年代に経営危機に陥った経験から、手元資金の使い方については慎重な姿勢をとってきました。しかし、アインホーン氏は、もっと株主還元に資金を使うべきだと強硬に主張したのです。

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