頻発した中国・工場ストライキ、対処できなかった日系企業の落とし穴

帝京大学経済学部准教授(日本エネルギー経済研究所客員研究員)
郭 四志

2010年5月上旬。中国深センで起きた台湾系EMS(電子製造受託サービス企業)、富士康科技集団(フォックスコン)・深セン工場のストライキを発端に、中国では日系企業をはじめとする外資系企業の労働争議が、珠江から揚子江、渤海圏へと、それこそ南から北まで広がった。合計80社以上の外資系企業が賃上げを要求し、ストライキを起こしたとみられる。

台湾系や韓国系の企業以外に、日系企業では、ホンダやトヨタ自動車、ブラザー工業といった系列企業の現地工場で、ストライキが発生していた。これは中国が1949年に建国されて以来、初めてと言っていいほど大規模なレベルである。

報道に寛容だった中国政府

この背景に何があったのか。大連にある日系大手企業の幹部によると、6月下旬、実は大連でも日系企業約20社でストライキがあった。ただしこれらは、地元政府の報道規制によって公表されていない。

今回の問題について、中国政府はある時点まで、報道を黙認する姿勢を取っていたが、ストライキが拡大するにつれて、全国に広まる国民の権利要求のデモなどを懸念。報道を規制し始めるという事態に陥っていた。とはいえ政府は今回、全般に比較的冷静で寛容的な態度をとっていた、と言える。

さかのぼって1990年代初期。珠海にある日系企業で賃金アップを要求するストライキが発生した際、中国政府は当時のリーダーに対し、外資導入政策を破壊した罪名で死刑を執行した。また近年でも05年9月には、政府・警察が介入したキヤノン系列の大連工場で、ストライキを起こした2人の従業員を逮捕し、参加した主要メンバー5人を解雇させた。

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