頻発した中国・工場ストライキ、対処できなかった日系企業の落とし穴
つまり、これまで中国政府、特に地方では外資導入を通じて、GDP成長率など、表面上の実績を重視したものの、ストライキに対しては厳しい措置をとってきた。しかしながら今回、政府はこれまでとはかなり異なった、対策を選んだのである。
中国では70年代末から、「改革・開放」政策以来の30年間、GDPは82倍の約30兆3000億元まで達した。これに比べて従業員の平均年収は、47.5倍の約3万元にとどまった。賃金上昇のスピードは、GDPの成長スピードをはるかに下回っている。
また世界の多くの国では、人件費が企業の製品コストの50%を占めるが、中国ではわずか10%しか占めていない。さらに、世界における最低賃金が1人当たりGDPの58%であるのに比べ、中国は25%にすぎないのだ。一方で資本に対する収益率は年々上昇。裏返せばこれは中国国民の消費能力が不足している主因とも言える。
中国国民は成長の恩恵を受けず
中国の統計によると、現在は全体の10%を占める富裕層が全国都市部における資産の45%を握り、他方で、10%を占める最低収入水準の低所得層はわずか1.4%の資産を持っているだけだ。
また世界銀行の調査では、中国は1%の家庭が国の富の41.4%を掌握、米国では人口の5%が国の富の60%を掌握している。中国の富の集中度は米国をはるかに超えている。世界中で貧富の両極化がもっとも深刻な国の1つだと思われる。
社会における貧富の差は大きく、それを表すジニ係数は0.48に達した(表1)。その差はますます広がっている。ジニ係数は0から1までの範囲で表され、1に近づくほど格差が大きく、不平等な分配が行われていることを示す。中国のジニ係数は、改革開放の初期から07年に0.28から0.48まで上昇しており、ここ2年ほどでさらに上がり続けていると見られる。