頻発した中国・工場ストライキ、対処できなかった日系企業の落とし穴
そのうえ最近の出稼ぎ労働者の多くは、農村部の産業を振興させる政府の「三農(農業・農村・農民)」政策の恩恵を受けてきた。地元に近いエリアで就職し、兼業するようになってきており、よほど給料・待遇のよい会社がないかぎり、家族と離れ離れになって、生活コストの高い都会まで出稼ぎに行かない。渤海から沿海都市の日系をはじめとする外資系企業では、若年層の現場の従業員を募集しにくくなっている。
いまや中国の労働市場は買い手市場から売り手市場へと変わった。若年層人口の需要量が供給量を上回り、売り手のほうがずっと優位にある。従業員側は労使交渉でも強い立場にあり、経営者側に対する交渉力が高まっている。今回のストライキで企業の経営者は、ほぼ労働者の賃上げ要求どおりに合意した。
日系や台湾系企業の低すぎる賃金
今回の外資系企業における賃上げ要求ストは、日系や台湾・韓国系企業に集中していた。その反面、欧米系企業ではほとんど起こっていなかった。なぜ、日系企業ばかりに、ストライキが発生したのだろうか。
その背景・要因として、まず日系企業の賃金の低さが挙げられる。
日系企業の賃金は地域や会社によっても異なる。大連など沿海都市の場合、平均的にワーカー(従業員)の基本給は1000元で、残業など各種手当を含んだ月収は、1500~1800元(表2)。上海や北京、広州などの大都市ではやや高く、2000元ぐらいである。
一方で、欧米系企業のワーカーの月収は2500~3000元と日系企業の1.5倍以上だ。さらに中国系企業を見ると、ワーカーの月収は、国有企業で2000~3000元、民間企業でも1800~2500元となる。課長・部長などの管理職では、この差がもっと大きい。