頻発した中国・工場ストライキ、対処できなかった日系企業の落とし穴
現地化が遅れていることはさまざまな問題を招く。現地の優秀な中国人スタッフがつねに不満で、頑張っても部長や経営陣のメンバーになる見込みがないことで、達成感を得られない。
管理職・経営陣はほとんど日本人だから、現場の労働事情、ワーカーたちの意見や不満をよく把握できず、対処もできない。
今回の日系自動車部品メーカーのストライキは賃金の低さが主因とされているが、もし管理職や経営陣メンバーの多くが現地人だったら、日本の慣習・文化とは異なる中国人の考え方や不満にもよく耳を傾け、事前にコミュニケーションし合うことで、そうした事態は避けられたかもしれない。
人材確保でも日系企業は弱い。中国における欧米系企業や地場企業と競争し、優位に立つためには、人材の現地化や国際化こそカギなのだ。
ちなみに日系企業の賃金の低さ、ヒトの現地化の遅れは、離職率が高い原因でもある。現在、日系企業の平均離職率は20~25%で、欧米系企業の10%を上回る。日系企業を離れた現地中国人の再就職の希望先は、(1)欧米系企業、(2)国有企業、(3)大手民間企業の順だ。
環境激変に対応できる中国ビジネスを
結局、日系企業で発生したストの背景には、中国側の原因以外にも、主に日系企業の「給料の安さ」と「現地化の遅れ」がある。
欧米系企業が技術集約度の高いビジネスモデルを目指してきたのと異なり、数多くの日系企業は長い間、中国現地における低コストを利用するため、労働集約型業種を中心に進出してきた。日本にある既存の生産体制との分業や補完を狙い、それとすみ分ける効果を図ってきたためだ。日系企業の給与や昇進・昇格のシステムも欧米企業とは大きく異なっている。