50歳肺がんで逝った男がネットに遺した生きた証 没後も「終わらないブログ」で家族や仲間が賑わう

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代理作業も続けている。ブログ投稿が難しいと感じる人には、メール等で文章を送ってもらい、Kaoさんが代わりに投稿している。コメント欄に長文で思いを寄せる人に声をかけてメンバーになってもらうこともよくあるという。合わせると現メンバーの半数以上に上るそうだ。

「チームブログのなかでhiroは生き続けていています」

その一方でhiroさんの個人ブログは更新が止まっている。没後もしばらくはKaoさんが家族の視点で闘病を振り返る記事をアップしていたが、2019年の大晦日以降は動きがない。両ブログの違いについてKaoさんはこう語る。「個人ブログはhiroの生きた証ではありますが、個人の闘病記です。闘病記は闘病記として残し、現在進行形であるチームブログでの活動を主にしています。生前と形は違いますが、チームブログのなかでhiroは生き続けていていますから」

2015年4月3日にhiroさんがアップした投稿。日記に埋め込んだ前日のTwitterに桜の写真がある(筆者撮影)

子供たちも2つのブログの存在を知っている。しかし、細部までは目を通していないという。「生前に気づけなかった父の思いをブログというかたちで遺してくれたことは喜んでいました。ですが、すべてを知るのは自分たちが大人になってそのときがきたら、と思っているようです」。

そのスタンスはかつてhiroさんが綴った「いつか子供達が自分のブログを見た時に親父を思い出してくれたら」の思いにぴったりと重なる。ただし、実現するには大人になってそのときが来るまでブログが存続している必要がある。

チームブログは更新が終わらないブログとして機能している。個人のブログも静止しているが、役目は終えていない。それを承知している家族と仲間がいるなら、どちらも終わらないブログといえるのかもしれない。そこには追悼や供養の本質にもかかる大切なものがあるような気がした。

古田 雄介 フリーランスライター

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ふるた ゆうすけ / Yusuke Furuta

1977年生まれ。元葬儀業のライターで、キャリアは15年。デジタル遺品や死後のインターネットコンテンツの行方などを追っている。著書に『故人サイト』(社会評論社)、『中の人』(KADOKAWA)など。

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