50歳肺がんで逝った男がネットに遺した生きた証 没後も「終わらないブログ」で家族や仲間が賑わう

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hiroさんが個人のブログ「生き続けてやる肺癌オヤジのつぶやき」(http://blog.livedoor.jp/life417/)を立ち上げたのは2013年7月4日。大阪・泉州の自宅からほど近い病院で「ステージⅣの進行がん」と伝えられた翌日のことだった。

47歳で突然のがん告知

最初に開設したブログ「生き続けてやる 肺癌オヤジのつぶやき」

非小細胞肺がんで、脳にも転移が見つかっているという。前月から身体がだるく、声がかれて息切れするなどの症状が続いたため診察を受けたが、47歳で末期がんになっているとは夢にも思わなかった。医師からは「何も治療しなければ数カ月単位で、治療を行えば年単位です」と余命を告げられた。

告知を受けたその日に友人と酌み交わして胸の内を明かし、数日後には理髪店でも淡々と状況を話して店主に驚かれたりした。裏表のない性格で、秘密をため込むのは得意ではない。小学校4年の娘と1年の息子に話すことには逡巡したが、数日後に伝えると意外とすんなり受け止めてくれた。

率直な思いと状況を伝えたい。その気持ちの延長線上で立ち上げたブログには、やはり率直な思いが綴られている。

<告知を受けた人間の正直な気持ちです。
「死にたくないです。何かの間違いだといまだに信じてます。でも現実です。本当にまだまだ死ぬわけにはいかないのです。子供の成人した姿を見ないといけないのです。息子と酒を呑みたいのです。だから生きたいのです。わがままは言いません。だから生きたいんです。娘の花嫁姿が見れるまで生きさせてください。」
これが本音です。だから前向きに考えていますが、告知を受け状態を知れば知るほど落ち込みます。>
(2013年7月11日 「ガンの宣告を受けて」/生き続けてやる肺癌オヤジのつぶやき
http://blog.livedoor.jp/life417/archives/2013-07-11.html

外科手術を受けて身体中のがん細胞をなくす選択肢はすでになく、いかにがんの進行を抑えるかが治療方針の基本線となっている。営業の仕事は続けられず、会社は辞めざるをえなかった。体調も経済的な事情も不安が募る。つらい抗がん剤治療を続けることで1年、2年と乗り越えられても、この生活は今後も続きそうだ。

<昨日何気なしにお風呂に浸かってる時に思った事です
癌の告知を受けると
長いトンネルに入ったみたいで
遠くにかすかですが明かりがみえてて
多分それは出口なんでしょう
でもどれだけ進んでも近くならないんです
トンネルには出口まで何メートルとかの表示と
避難路まで何メートルとかの表示がありますよね
あれが抗癌剤まで何メートルとか
先進医療はコチラみたいな表示になるんですよ
そんな表示が幾つも出てきますが
でも出口には近づかないんです>
(2014年3月5日 「トンネル」/生き続けてやる肺癌オヤジのつぶやき
http://blog.livedoor.jp/life417/archives/2014-03-05.html
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