50歳肺がんで逝った男がネットに遺した生きた証 没後も「終わらないブログ」で家族や仲間が賑わう

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そうした家族への思いともうひとつ。生きた証を残したいという欲求も生じた。軽い気持ちで始めたというブログだが、開設から1年過ぎた頃には明確な目的意識が乗るようになっていた。

終わらないブログ、終わらない生きた証

<がんになって何故か何かを残そうと。
このブログもその一つです。
がん闘病記のブログが多いのも、何かを残したいという気持ちからなんでしょう。
人って死を意識した時に自分の存在を残したくなるんでしょうねf(^_^)>
(2014年12月9日 「生きた証(^^)」/生き続けてやる肺癌オヤジのつぶやき http://blog.livedoor.jp/life417/archives/2014-12-09.html

そこから生まれたのが、冒頭で引用した“終わらない!ブログ”の構想だった。自身の闘病ブログは自身の死によって終わりを迎えるが、もともと書き手がたくさんいるブログなら、一人が何らかの理由で更新しなくなっても、残りの人たちで場を盛り上げていける。その後に新たなメンバーが加わればもっと盛り上がるかもしれない。自分が死んだ後も過去のものにならない生きた証ができたら、それはすごいことではないか――。

メンバー制で運用できる無料ブログを探したところ、個人ブログで使っているlivedoor blogが適合するとわかった。2015年3月11日にチームブログ「生きる!」(後に「がんと共に生きる!ブログ 肺がんオヤジと愉快な仲間たちのPRIDEそれは生きること!」に変更)(http://blog.livedoor.jp/ikirugan/)を発足。個人ブログを通してやりとりしている仲間を中心に声をかけると、次々と参加表明が届いた。肺がんや乳がんと闘病している人や、がんで家族や恋人を亡くした人など、さまざまな立場の声が投稿されるようになる。

「生きる!」ブログが軌道に乗ったあと、ログインの切り替えなどの手間を省くために、個人ブログは過去記事ごとはてなブログ(https://life417.hatenablog.com/)に引っ越した。「cancer life肺がんオヤジのつぶやき」とタイトルを改めたが、しばらくして「生き続けてやる肺がんオヤジのつぶやき No2」に切り替えて今にいたる。

「がんと共に生きる!ブログ」のトップには、hiroさんによるコンセプト説明とメンバー参加の呼びかけ記事がある

筆者がhiroさんとやりとりさせてもらうようになったのはこの頃からだ。2016年の初旬、がんと共に生きる!ブログの目標についてメールで尋ねたことがある。

hiroさんは「目標はとくに考えてません。書きたい人が書きたいときに書いてくれればいいと思ってますし、読んでいただける方がいるだけでも嬉しいことなので、アクセス数も気にしていません。ただ、できれば永遠に続いてほしいと思っています。もし、自分に何かあっても管理をしていただける方がいたらの話ですが」と返してくれた。

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