「だらだら遊ばない」Z世代若者がハマる新しい遊び なぜ若者が近場で「ものづくり体験」をするのか

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ここまで「クリエケーション」の事例を4つ紹介した。友達とコミュニケーションを取りながら、共通体験をし、それが有形無形の思い出となり、絆を確認する機会となる。インスタグラム投稿にも多くみられ、コロナ禍であっても友人同士との思い出を残す写真は絶えることがない。

特に「梅酒作り」「コーヒー作り」などは若者だけでなく、大人でも童心に返って楽しむことができるだろう。久しぶりに友人に会った際や、直接友人との思い出を残す機会が減ってしまった人は「クリエケーション」にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

原田の総評:友達との時間を「非日常体験」に

コロナ禍でZ世代の間で流行った「クリエケーション」のレポートはいかがでしたでしょうか?

コロナ前までは、日常は近場の居酒屋かカフェで過ごし、旅行に行くと思い出作りにロクロを回し食器を作るツアーなどに参加する、といったこともよくあったと思います。

つまり、日常生活に特別な体験は必要ないものの、旅行先では記念や思い出として、「非日常な体験」を求める、ということです。

ところが、コロナにより、日常的に友達に会えなくなったZ世代は、貴重になってしまった日常におけるただ友達に会うという行為を、ただ近場の居酒屋やカフェで過ごすのではなく、「非日常体験」にしたい、と考えるようになりました。

結果、友達と久しぶりに会うときに、旅行先でもないのに、彼らは近場でビーズ作りができるお店に行ったり、香水作りができるお店に行ったり、絵が描けるバーに行くようになったのです。

コロナが落ち着きつつある今ですが、恐らく今後もこの状況が続いても、Z世代の間でこの「日常における非日常ニーズ」は定着していくのではないか、と私は思っています。なぜなら、コロナによってZoomなどのオンラインが普及したことで、例えば大学生のサークルの会議なども、ゼミの集まりなども、必要な時は対面で会うようになっているものの、あまり重要なものでない時はオンラインで済ませるなど、今後リアルとオンラインの使い分けがされるようになり、全てが元通りの対面になることを人は求めていないと思うからです。

しかしこれを逆に言えば、コロナ前と比べると人に会う頻度は全体的に少なくなるわけで、となれば、1回人に会うことの希少価値は相対的に高まります。だから、ただ友達とだらだらと近場の居酒屋やカフェで過ごす人は減り、非日常体験を求めるZ世代が増えると思うのです。

このコロナによって生まれたZ世代の「クリエケーションニーズ」は、企業や店舗にとって様々な面で参考になるはずです。「ただ食事をさせる」「ただ時間を過ごさせる」という発想から脱却し、いかに日常において「非日常体験」や「物づくり」をさせることができるか。それが今後のZ世代を対象としたマーケティングのキーになっていくのではないでしょうか。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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