8月23日、甲子園で行われた女子高校野球決勝戦を、感慨深い眼差しで眺めていた人たちがいる。女子野球をここまで盛り立ててきた先輩野球人たちだ。
なにしろほんの20年ほど前まで、野球は「男がやるスポーツ」だった。そんな中で、女子野球選手たちはか細い可能性の糸を手繰って野球を続けてここまでやってきた。
元侍ジャパン女子代表監督で、履正社高校女子野球部監督の橘田恵は、その一人だ。ひたすら好きな野球に打ち込み、自身の熱量で女子の前に立ちはだかる「野球の壁」を次々と打ち破ってきた。その思いを聞いた。
野球とソフトボールは似て非なるスポーツ
「野球を始めたのは小学校1年のときです。3歳年上の姉が、神戸市に5つあった女子野球チームの1つ西神戸パワーズに入っていて“お菓子もらってきて楽しそうやな”と思ったのがきっかけです。最初は、監督から言われて右翼のポジションに連れていかれ、“ボールが飛んできたら手を挙げている人に渡すねんで”と言われました」
たまたま入ったチームだったが、西神戸パワーズは強豪で、橘田が4年、5年のとき全日本女子軟式野球選手権大会小学生の部で準優勝した。6年生のときには橘田がキャプテンになったが、1回戦で負けてしまった。野球のことを本気で考え始めたのは、このときからだった。
しかし中学では近隣に女子野球チームがなかったこともあり、これも姉がやっていた中学校のソフトボール部に入り、プレーを続けた。
「ソフトボールは野球に比べればシンプルで、より瞬時の判断が大切なスポーツでしょう。私は盗塁や牽制が好きで、投手のフォームを盗んで走るとかやりたかったのですが、ソフトボールには離塁しての盗塁がなく、守備も少なからず野球とは違います。3年間ソフトボールをプレーしながら、この競技で上を目指そうか悩みつつも、最初にプレーしたスポーツが野球だっただけに“野球やりたい病”をひしひしと感じるようになったんです」
よく「女子にはソフトボールがあるじゃないか。オリンピック競技でもあるし、女子はソフトをやればいいんだ」と言う人がいるが、ソフトボールと野球は似て非なるスポーツだ。
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