ソフトボールで頑張りたい人がいる一方で、野球をする機会に恵まれずソフトボール選択をしている人もいる。女子プロ野球の選手にもソフトボール出身者がたくさんいたが、彼女らはソフトボールをやりながらも「いつか野球がしたい」という思いを抱いていたのかもしれない。
「中学3年時には私立高校のソフトボール部からスカウトも来ていただいたのですが、やっぱり野球がやりたかったので、中学の先生に断ってもらいました。当時、私が住んでいた兵庫県の北播学区では、県立小野高校が一番野球が強い学校でした。私は野球をやるつもりで野球部の監督に姉から“女子でも入れるか”と聞いてもらいました。
“今の時代やからいいんじゃないか”とのことで期待していましたが、入学後に監督が異動になりこれまで前例のない女子部員に対しての入部はなかなか受け入れてもらえなかった。でも父が“3日でやめると思うからやらせてやってくれ”と学校にかけあい、どうにか1年生の夏前に仮入部(練習生という形)を許されました。もちろん試合には出場できない、練習試合も内野でノックを受けるのも、危険なものはだめという条件でした」
「神戸ドラゴンズ」での得難い出会い
橘田の父も高校まで野球をしていたが、自分の父親が急死したこともあって野球を断念した。その思いが、見どころがあると思った娘への期待に変わったのだろう。
しかし練習生という立場は想像以上に空しかった。
「最初は一人で壁当てをしたりしていましたが、一人ではできないこともたくさんあるだろうと、年配の英語の先生が私のキャッチボールやティーの相手をしてくれました」
マネジャーになることができたなら、橘田はその道を選んだかもしれないが、小野高校では女子マネジャーも認めていなかった。
そこで土日祝は、高校の監督も了解のうえで、中学硬式野球チームであるヤングリーグの「神戸ドラゴンズ」で練習に参加し、平日だけは高校の練習に加わることにした。「神戸ドラゴンズ」でも橘田は「選手」ではない。「練習生」の扱いだ。しかし、ここで橘田は得難い出会いを経験する。
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