今年の東京パラリンピックは、民放が一部の競技を中継するなど、例年以上に注目度が高かった感がある。ハンディキャップがある競技者たちにも、健常者と何ら変わらないアスリートマインドがあることに感銘を受けた人も多かったのではないか。
とくに知的障害クラス・平泳ぎで世界新記録を更新して、金メダルを獲得した山口尚秀の活躍は、彼の真摯な振る舞いもあって、大きな感動を与えた。スポーツの可能性は、障害者に目を転じることで、さらに大きく広がるのだ。
折しも、今年、知的障害のある若者を高校野球に参加させて、甲子園を目指そうというユニークな取り組み「甲子園夢プロジェクト」が始まった。主宰者の久保田浩司氏は、東京都立青鳥特別支援学校の主任教諭。もとは日体大まで硬式野球をやっていた野球人だ。
知的障害者に硬式野球をするチャンスを
高校野球の指導者になりたくて教員試験を受けて合格し、配属されたのは養護学校、今の特別支援学校だ。
「意気消沈して、言い方は悪いがこういう生徒たちを教えられるのだろうかと思った」と久保田氏は語るが、「先生、キャッチボール教えてくれよ」とダウン症の子に言われてソフトボールを手にしたのがきっかけで、ソフトボールを指導するようになり考え方が変わった。一生懸命教えているうちに、支援学校のチームが健常者チームに勝つようになったのだ。
ソフトボールの指導は17年に及んだが、久保田氏は知的障害者に球技をやらせることのメリットに確信を抱くようになった。
そして久保田氏は併せて千葉県内の社会人野球チームの指導も行うようになったが、硬式野球への思い立ちがたく、知的障害者に硬式野球をするチャンスを与えたいと強く思うようになった。
「自分が勤めている学校でチームを作って硬式野球にチャレンジするのも一つの方法ですが、何か他にやり方はないかと考えているうちにコロナになってしまった。そこで、以前から取材に来てくださっていた新聞社の方にも相談して、全国の知的障害のある子たちに“甲子園目指して野球をやりませんか”という呼びかけをすることにしました」
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