長引くコロナ禍で、日本高野連が財政的に苦境に陥り、クラウドファンディングを実施したものの捗々しい結果になっていないことを「日本高野連『クラファン』で財政難を抜け出せぬ訳」で紹介した。8月末に締め切ったクラファンは、1億円の予算に対し、達成率14%弱の1392万円余に終わった。
高校野球に倣ったのだろうが、中学以下の野球も、アマチュアリズムにこだわり「金儲け」だと思われることを極端に嫌がる傾向がある。筆者には、そのことが日本野球の進化の足かせになっているように思えて仕方がない。
「ボランティア」という建前の指導
中学、小学校の少年硬式野球の主要団体には、ボーイズ、リトルシニア、ヤング、ポニー、リトルリーグなどがある。硬式球で野球をするこれらの団体は、有名高校野球部に進むための「野球塾」の異名がある。しかし各団体は「うちはボランティアです」「経費にあてるために月謝はとっているが、報酬は得ていない」などと口をそろえて言う。「金儲けで野球をしている」と思われたくないのだろう。
親がチームに払う月謝は、用具代、グラウンド使用料などに支払われる。チーム専用のユニホームやバッグ類は入団時に購入する。指導者には交通費など経費の他には、謝礼は支払われない。指導者たちは「ボランティアで教えている」という建前だ。そして「監督が一番偉い」というチームが多い。
こういうチームでは、指導者が昔ながらの指導をいまだにやっていることも少なくない。本来ならば指導法のアップデートやケガや故障に関する医療の知識も必要なはずだが、「(無償で)教えてやっている」という認識の指導者はなかなか勉強しない。しかし指導が不適切であっても、親は「お金を払っていないのだから」とクレームをつけにくい雰囲気がある。
「指導者の無償の善意によるチーム運営」が、少年野球の進化を妨げているという側面は確かにあるのだ。
しかしながらボランティアでも、親たちは遠征費など臨時の出費をたびたび求められる。また練習の際のお茶当番などの習慣が残っているチームもあり、負担は小さくない。
そうした出費に加えて、本格的に野球をやらせている家庭では、肉体づくりのためにプロテインを常用している子どもも多い。さらに強豪チームでは、レギュラーになるために、チームとは別に「野球の個別指導」をする専門ジムに通う子どもまでいる。アマチュアリズムが基本でありながら、経済力がないと子どもに野球をさせることができなくなっているのが現実だ。
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