いろいろと心配事はあった。はたして賛同する人はいるのか。コロナ禍でもあるし、無謀なチャレンジだと思われるかもしれない。そういう危惧があったが、久保田氏はメディアを通じて「甲子園夢プロジェクト」を全国にアピールした。
するとネット配信した晩に、久保田氏の携帯が鳴った。愛知県の生徒の母親からだった。「お父さんがネット記事を見て、おい、こんなのやるぞ! ぜひ息子にやらせよう、と言ったんです」。その生徒は野球経験はないが大の中日ファンでファンクラブにも入っていた。両親は何とか硬式野球をやらせたいと考えていたのだ。
最終的に11人の志望者が集まる
さらに京都の生徒の父親から「こういうの、待っとんたんですよ。うちの息子は小中学校で普通に少年野球をやっていたのに、特別支援学校に行ったらできなくなったんです。顧問の先生が頑張って交渉してくれたんですが、ギリギリのところで“硬式はダメ”と言われて意気消沈していたんです」と電話があった。
栃木県からも高校野球経験のある親から「野球が好きで体を動かすのが好きなのに、野球をさせてやることができなかった」と連絡があった。こういう感じでほぼ毎日連絡があって、最終的には11人の志望者が集まった。
「希望者なんてゼロなんじゃないかと思っていたのに、こんなにやりたい人がいるんだな、とすごく感じたのと同時に、しっかりとしたプロジェクトにしないといけないと責任を感じました」と久保田氏は語る。
最初の練習会を3月27日、東京都江東区、新木場の室内練習場で行った。
「記事を見て特別支援学校の教員や他の方もスタッフとして協力してくださった。私はまあまあできる子はいるだろうな、とは思っていたのですが、びっくりするほどうまい子がいたんです。その辺の高校に行けば、試合に出られるんじゃないかと思えるレベルの子が11人中3、4人いた。すごいな、と思うと同時に、本当に甲子園を目指してやらせてやりたいと思うようになりました」
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