高学歴な人だけが成功すると思う人の大きな誤解 「平均」から外れたところで才能は開花する

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統計を取れば「才能の傾向」はあるものの、あくまでも傾向にすぎません。統計から外れたケースにも、数多くの成功者がいます。たとえば、19世紀に活躍した物理学者・化学者であるマイケル・ファラデーは「平均から外れたパターン」の典型といえるでしょう。極貧家庭に生まれたファラデーは、学校教育を受けることもままならず、足し算や引き算といった基礎的な算数くらいしかできませんでした。学問の世界に初めて触れたのは20歳になってからで、近代化学の入門書に感銘を受けたといいます。

まわりからは「冗談」にしか思えない存在だったに違いありません。しかし彼はその後、30歳で電磁気回転の原理を発見し、40歳で電磁誘導の現象を発見します。そして、磁気光学効果や反磁性を発見したのは54歳のときでした。これらの発見を通じ、50代も後半になってからようやく自身が提唱していた「力の場(Field of force)」について理論的に説明できるようになったのです。ファラデーの心の支えは、自己啓発書だったそうです。彼は学校に行けない代わりに、熱心に自己啓発書を読みふけり、そのモチベーションを保っていたのでした。

「負けた」というノイズを取り払え

ファラデーのように平均から外れた成功者は多くいます。むしろ、エリート街道を突き進んできた成功者のほうが少ないといえるでしょう。その意味では本来、人は一般的な成功パターンに乗っている必要などないのです。挫折しても、軽んじられても、周囲のシグナルを無視し、強固な意志で努力を重ねられた人は大成することができます。

しかし、世の中がそうなっていないのは、私たちが「平均」や「出身大学」といったわかりやすい指標を重視してしまうからです。名門大学が学生を選ぶときも、企業が新たな人材を探すときも、「望ましいパターン」にはまっている人を探しているにすぎません。このシステムに従って生きていると、何が起きるでしょうか?

たとえば、一流大学に通うことがすべてだと教わってきた子どもが受験に失敗したとします。このとき、子どもは歯を食いしばり、自分はまた羽ばたけると思うでしょうか? 答えはNOです。ほとんどの子どもたちは、「競争に負けた」という思いで頭がいっぱいになってしまうでしょう。既存の社会システムへの依存が強いほど、挫折感は深まります。そうして数多くの才能が潰れていったケースを誰しも目にしたことがあるのではないでしょうか。私たちは、そのような障害となる「ノイズ」をまずは取り払う必要があるのです。

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