「栗原はるみ」と「今の料理家」との決定的な違い 女性料理家が主婦と呼ばれがちな事への違和感

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どこにでもある材料で簡単にできるレシピを売りにする山本氏はこれまで、電子レンジで具材とパスタを一緒に加熱調理するレシピなど、画期的なレシピをいくつも考案してきた。「もう電子レンジ料理にかけては、参考資料みたいなものがない。自分が初めてやってみた料理も多いと思います」と言う仕事熱心さを持つ。

一方、栗原氏も『プロフェッショナル』の中で、人気のパラパラチャーハンを誰でもできるようにするために、火加減や油の量、入れるタイミングなど何十通りも研究し、レシピ完成まで1カ月もかけていると伝えられた。栗原氏のレシピは、再現性の高さで定評がある。両者ともに、料理家としては仕事に厳しいプロフェッショナルだ。

料理家と主婦は密接に関係してきた

となると、両者のスタンスの違いは、世代的な部分もあるかもしれない。

栗原氏は、仕事を持つ・持たないにかかわらず妻が家のことを全面的に引き受けるのが当たり前、としてきた団塊の世代。一方、1986年生まれのミレニアル世代の山本氏は、夫婦で家事をシェアしている。

料理家が主婦と混同されやすいのは、料理家と主婦が密接に関係してきたからかもしれない。栗原氏がそうだったように、昭和の時代は特に、料理上手な主婦が周囲に乞われて料理教室を開き、やがてメディアに登場するようになることが多かった。料理家はそもそも、主婦雑誌やラジオなど大衆向けメディアが出現してから広がった職業だ。それは、家庭の台所に主婦が自ら立ち、毎日工夫を凝らして料理するようになった時代でもある。

そうした中、主婦雑誌が売れ、テレビでカリスマ料理家が誕生する。当時のカリスマ料理家たちは、欧米へ渡航して得た知識をレシピに落とし込み、主婦たちに伝えていた。昭和の時代は、豊かな生活体験をもとに新しいレシピを提案するのが、料理家たちの役割だったのだ。

やがて働く女性の時代が訪れる。小林カツ代氏が時短料理家として一世を風靡したのは、仕事と家庭のダブルワークを背負った女性たちが、専業主婦と遜色ない食卓を維持できるレシピを必要としたからである。

働く女性の増加に伴い、時短レシピはくり返し流行するが、そのたびにレシピは進化し、より簡単にできる料理が家庭に入っていった。また、1980年代以降のグルメブームで、世界各国の味を人々が求めるようになった。海外体験を生かしたアジアの料理のレシピも、料理家たちは求められてきた。

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