「うちの嫁が」と言う男性には違和感しかない 土井善晴さんが訴える家の仕事の再認識
「おふくろの味」という言葉を世に広めた日本の家庭料理研究の第一人者、土井勝さん。その数十年後、息子である土井善晴さんは「一汁一菜」という新しいスタイルを提案することで、家庭料理の形をアップデートした。
「土井勝の息子ということで、伝統的なものを踏襲する料理研究家なんだろうと思われることもあるんですけど、そうじゃない。私は料理界でも異端児みたいなもんですよ(笑)」
スイス、フランス、京都で修行を積んだ末に、土井善晴さんが家庭料理の道を選ぶことになったきっかけとは?
料理のジャンルは何でもよかった
――料理の道を志したのはいつ頃でしたか。
高校生のときにはもう決めてましたね。一刻も早く料理の道へ進みたいから大学へは行かないつもりでいたんですが、「いや今の時代、大学は行っておいたほうがいいんちゃうか」と周囲から言われたので、とりあえずは大学に入ったんですよ。
でもやっぱり心は早いこと料理の道に行きたいという風に焦っていた。それで1年間休学して、スイスのローザンヌへ行かせてもらいました。語学学校に籍を置きながら、午後はローザンヌパラスという立派なホテルの厨房に入ったのが初めてで、そこがスタートです。20歳くらいのときかな。
料理の種類は正直何でもよかったんですよ。フランス料理でも中華料理でも何でもいいから、とにかく料理の世界に入るぞというのがあって。まぁ「フランス行く」ゆうのがかっこいいかなぁという気持ちもあったけど(笑)、そういう動機で自分を奮い立たせてましたね。
1年間スイスで働いてから帰国して、次は神戸のレストランで働きながら大学に通い続けて、卒業後はフランスへ修行に行きました。
当時のフランス料理は、ポール・ボキューズがヌーベル・キュイジーヌの旗手としてメディアに取り上げられ始めた頃です。ミシュランの星をとるために命がけで料理を作るシェフたちの世界を間近に見たことで、大いに影響を受けましたね。