京都の老舗料亭が巻き起こす「機内食」革命

三ツ星シェフとシンガポール航空がタッグ

シンガポール航空のビジネスクラスで、3月から提供される機内食「花恋暦」の「二の重」(記者撮影)

「機内食はまずいもの、というのが定説だった。それを世界中で変えたかった」

京都の老舗料亭「菊乃井」は、あの『ミシュランガイド』で最高点の三つ星を獲得したこともある名店。その三代目主人を務める村田吉弘氏は、機内食に並々ならぬ思いを抱いていた。そんな折に機内食の監修をしないかと依頼したのが、シンガポール航空だった。

20年にわたり機内食を作る

「トップクラスのエアラインの機内食が良くなれば、他社も変わる」。そう感じた村田氏は二つ返事で引き受ける。1998年に監修を始めて以来20年近くにわたって、村田氏は同社が日本とシンガポールを結ぶ路線で提供するビジネスクラスの和食を作り続けている。

今でこそ有名シェフが監修する機内食はどの航空会社でも当たり前になったが、1998年、シンガポール航空は他社に先駆けて機内食を監修するシェフ集団「インターナショナル・カリナリー・パネル(ICP)」を立ち上げた。村田氏はこの設立と同時にメンバーに加わった。現在では日本のほか、フランス、イタリア、米国、オーストラリア、インド、中国から計8人の有名シェフが参加している。

同社は3月1日から、村田氏が監修するビジネスクラスの機内食「花恋暦(はなこいれき)」を刷新した。今年で創立70周年を迎えることを記念し、日本人客へのサービス向上策をまず機内食から始めている。

「花恋暦」の一膳目「花膳」。和食ならではのヘルシーさが売り(記者撮影)

一膳目はしょうゆゼリーが添えられた真鯛の野菜巻きや玉子焼、タコや大根の煮物、茶そばの入った「花膳」。そして二膳目の「二の重」には焼き魚や炊き合わせ、白魚ご飯が盛られ、みそ汁もつく。ユニークな食器も、村田氏が自ら選んでいる。

和食ならではのヘルシーさが売りの一つだ。「機内で体を動かさないので、高カロリーで脂っこい洋食だと、胃にもたれやすい。花恋暦は600キロカロリーしかないので、もたれにくい」と村田氏は説明する。

航空機内という環境でよりよい食事を提供するには、地上とは大きく前提が異なる。その一例が味付けだ。高度3万フィートを飛び、気圧が低くなる機内では人間の味覚が鈍くなるため、少々濃いめになっている。また今回のメニューにあるように、機内の揺れを考慮して、しょうゆはまわりに飛び散らないよう、ゼリー状にするといった工夫もされている。

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