大阪王将が武蔵野の「町中華の屋号と味」継いだ訳 後継者問題で廃れる中、地域の名店残す新たな手

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さらに、町中華を継承するには大きなハードルがある。

町中華はその味だけでなく、人と人とのつながりで成り立っている部分が大きい。常連客が通う理由としては、味がおいしいことと同じぐらい「店主に会いに行く」という側面がある。店の看板メニューをレシピどおりに作っても、店主がいないお店に常連客が通い続けるかは別問題だ。

外食チェーン店は決められたオペレーションで接客・調理をすることが求められるが、例えばラーメン店の事業承継においては、こういった課題を解決するために、店主がすぐには退かず、しばらくは店に立つなど、のりしろ期間を設ける場合もある。

「今回のようなご縁があれば引き継いでいきたい」

取材してわかったのは、今回の場合は「事業承継」ではなく、あくまで「大阪王将」の「新規出店」という位置づけだということだ。「大阪王将」のオペレーションの中で、「栄楽」で愛されたメニューを再現していく。老舗の味が途絶えてしまうよりは、まずは味だけでも受け継ぎたいという思いなのだろうか。

「飲食店の後継者問題については、地域と共に歩んできた名店の味を絶やすことなく、次の時代へと受け継いでいくための取り組みが重要と考えております。今回のようなご縁がまたございましたら、引き継いでいきたいと考えております」(大阪王将担当者)

昔の栄楽(写真:イートアンドホールディングス)

町中華に限らず、地域に愛される名店は、地元のコミュニケーションを深める場所になっている。そのよさを受け継ぎながら、「大阪王将」が絆を支える場所になれればと考えているそうだ。

まずは名店の味を絶やさず受け継ぐ。町中華の衰退に一石を投じた大阪王将。伝統の味を守ることはもちろん、ここに町中華の接客や温もり、人の触れ合いをどう盛り込んでいくのかは課題となりそうだ。大阪王将にとってまずはトライアル事業の位置づけだが、上々の成果を残し、水平展開できれば新しい持ち味として打ち出せる可能性もある。

井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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