コロナ禍で「町中華」の閉店ラッシュが起きている。昭和の時代から長く続く個人経営の中華料理店である。
帝国データバンクが今年1月に発表した調査によると、2020年(1~12月)の飲食店事業者の倒産は780件発生し、過去最多の水準となっている。そして、そのうち13.5%を占めるのが「中華・東洋料理店」(105件)である。「町中華」はまさにここに当てはまる。
厚生労働省の2016年の調査によると、中華料理店の68%は個人経営で、経営者は60~69歳が30.6%(50歳以上で74.3%)を占める。中でも、後継者がいない店は69.1%もある。
「家業」という考え方が薄れ、店主が子供に継がせたがらない風潮があり、店主の代で店を閉めようと考えている店が多いのだ。町中華の後継者問題はコロナ以前から叫ばれていたが、コロナ禍での環境の悪化がきっかけとなって閉店を決める店が少なくないという。
町中華は町のソウルフード的に愛されている。昨日まであった町中華が町から急になくなり、それを嘆く常連客は数多い。もちろん次世代に継承できる店もあるだろうが、日本全体で見れば町中華というジャンルが大きく廃れていく懸念がある。
「町中華」スタイルの出店をスタート
ここで動いたのが大阪王将である。栄楽店のオープンに先駆けた今年4月には東京都豊島区に新店舗「大阪王将 東長崎店」をオープンし、地域密着型の「町中華」スタイルの出店をスタートしている。
従来の店内飲食だけでなく、持ち帰り窓口の機能を強化し、地域住民のテイクアウトニーズにも応えた。緊急事態宣言中の時短営業中でも売り上げは目標比170%超となった。テイクアウトは売り上げ全体の約7割を占めているという。
一方、栄楽店の形態のように、大阪王将のような大手外食チェーンが個人経営の町中華ののれんを承継することは大変珍しい。
チェーン店としては、老舗である町中華の屋号を使えることは大きい。単なる新規出店ではなく、その町に根ざしている店の屋号がそのまま使えるからだ。加えて、コロナ禍での町中華の衰退にも一石を投じることができる。
ただ、通常はオペレーションを簡素化したいところを、1店舗のためにメニューを増やすことは簡単ではない。そして、長年店を守ってきた店主とのコミュニケーションが円滑に進むかも大きな課題となる。
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