人見知りだっていい、口下手だっていい。通い続けてさえいれば、少しずつ周りの人と馴染んできて、いつの間にか「銭湯仲間」の隅っこにちゃんと身をおくコトができる。顔見知りが増え、健康も手に入る。
え、それだけかって? そう、それだけだ。でも考えてみてほしい。それが手に入らず苦しんでいる人がどれほど多いことか。それだけで人生とはほぼ十分なのではないだろうか。
デジタル化とかなんだとか、どこまでも新しいものを身につけなければ世の中から置いていかれて不幸まっしぐらということが当然のように語られる現代において、それは、今ここにある確実で貴重な希望だと私は思う。進歩なんてしなくたって大丈夫。ただ今できることを地道に繰り返す。その先にだってちゃんと幸せはあるのであります。
理由4:他人に気遣うという快楽を学ぶ
ことほど左様に、銭湯で幸せを手に入れる最大のコツは「ただ通うこと」である。でも一つだけ、あえて付け加えるならば、ほんのすこしでもいいので「他人を気遣う」ことをぜひお勧めしたい。
いやね、そんな大したことじゃなくて良いのだ。例えば、目のあった人に軽く会釈をする、椅子や洗面器など共有の道具は丁寧に扱う、シャワーの水が人にかからないようにする……こんなことを言うと、ちゃんとお金を払ってるのに、どうしてそんな余計な気を遣わなきゃならないのかと思う方もおられよう。
確かにそうだ。でもそれでも騙されたと思って、一つでもいいので、できる範囲で、赤の他人を喜ばせるようなことをやってみることをぜひお勧めする。
なぜならデスね、やってみればわかります。やったことは、結局自分に返ってくる。私がまさにそうだった。常連さんに行いを厳しく注意されるという事件に見舞われ、なんとか認めてもらおうと、まずは「こんばんは」「お先に失礼します」と挨拶をするところから始めた。
そうしたらデスね、ただそれだけのことなのに効果はテキメンであった。笑顔で挨拶を返してくれる人がたちまち増えて、雑談にも入れてもらえるようになった。
健康への不安や家族の悩みなどを聞いたり話したりするようになり、わが母が亡くなった時は一緒に泣いてくれたりもしたのであった。
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