3.指導者の学び
ルールや用具面の考え方以上に重要なのは、リーグに参加する選手、指導者が「学ぶ」という3つ目の柱だ。「リーグ戦を行う意義」や「スポーツマンシップ」などのセミナーを受講するのだ。コロナ前は実際に集まってセミナーを行っていたが、現在はリモートで行われている。
こうしたコンセプトでもわかるように、「Liga Agresiva」は単なるリーグ戦ではない。高校野球の現場で日々奮闘する指導者が「リーグ戦」という新しいトライアルをする中で、問題意識を共有し、高校野球の新たな可能性を模索する「ムーブメント」でもあるのだ。
トーナメント戦では経験できないさまざまな「学び」
「『Liga Agresiva』の始まりは、2014年に始めた中学硬式野球チームのリーグ戦『フューチャーズリーグ』です。中学もトーナメントが中心でしたが、リーグ戦にすることでいろんなメリットが見えてきました。そこで翌年、高校の指導者に話をして、大阪の高校6校で高校野球リーグ戦が始まったんです」
「Liga Agresiva」を主導するNPO法人BBフューチャーの阪長友仁理事長は言う。
阪長氏は新潟明訓高時代に甲子園に出場し、立教大ではキャプテンを務めた野球人だ。
卒業後会社勤めを経て、JICA(国際協力機構)に入り、世界各地でナショナルチームの指導など、野球普及活動を行う中で、子どもの将来を第一に考えるドミニカ共和国の野球と出会い、日本にこの考え方を広めようと決意。帰国後、小中学生の硬式野球チーム「堺ビッグボーイズ」に加わり指導者になった。同時に、各地で野球指導者へのセミナーを実施し、少年野球の改革に取り組んでいる。
今は「堺ビッグボーイズ」中学部の監督と、運営団体であるNPO法人BBフューチャーの理事長を務めている。
「日本のアマチュア野球は、トーナメント戦で行われることが多いですが、世界的にはリーグ戦が主流です。もともと野球という競技は、勝ったり負けたりを繰り返しながら、トータルでの勝率を争うことに向いているスポーツだと思います。とりわけ育成年代であるアマチュア世代では勝った後、負けた後、次にどうつなげていくかが重要なポイントです。
しかしトーナメント戦では負ければ次がなく再度挑戦する機会がありません。勝たなければ次がないために、指導者も選手も勝利至上主義に陥りがちで、勝つためなら手段を選ばないという思考に陥ったり、選手起用も偏ったりしがちです。
リーグ戦にはこうしたトーナメント戦のマイナス面はありません。もちろん、リーグ戦だから負けてもいいということではありませんし、控え選手を出すためにリーグ戦をするわけでもありません。『Liga Agresiva』は、ルールとスポーツマンシップに則って、最大限勝利を目指し、勝っても負けても次の機会に積極的にトライする姿勢を学ぶ機会になると思います」
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