「常識にうるさい人」ほど精神不安定に陥る理由 過剰な「べき論」はやがて自身を窮地に追いやる
メディアによる刷り込みを疑わない日本人。それは、常識を重んじる一方で、異端をゆるさない態度にもつながっているようです。
例えば、SNSやネット掲示板の使い方に、それは表れています。SNSやネット掲示板は本来、異なる意見が交わされるのが当然の場所なのに、日本人は「みんなと違う意見を潰す」ということを平気でやる。
そこには、ひとつの“正しそうな”意見には、みんなで「右にならえ」しなければならないという心理がみてとれます。それは「みんなと同じでないと不安」という心理でもあり、また「みんなと意見をそろえるべき」という同調意識の強さの表れでもあります。
日本人を取り巻く「息苦しさ」の正体
しかし本来、全員が同じ意見を持つことなど、ありえないこと。それなのに、「右へならえ」を押しつけられては、ストレスがたまるばかりです。「こうあるべき」と押しつけてくる人たちにかぎって、なんだか苦しそうに見えないでしょうか。
私自身は「右へならえ」が大嫌いな性格です。子どもの頃から私は「自分は人と合わせるのが苦手な人間だ」と自覚して、ひねくれ者として人生を歩んできました。医者という職業を選んだのも、会社員と比べて、人と合わせる必要がなさそうだったからです。
こうした性格のこともありますが、精神科医という立場からも、「みんなと同じ」を疑わない日本人には警鐘を鳴らす必要があると私は考えています。それは、あまりに強い同調への圧力がストレスのもとになり、うつ病などの精神疾患につながりかねないからです。もっとみんなが本音を隠さず、それぞれの意見を自由に発言できる社会になってほしいと願っています。
介護の世界も、メディアによる刷り込みにより、誤解が生まれています。高齢者虐待に関するニュースでよく話題になるのは、多くの場合、介護施設などで起こる事件です。そのニュースによって「介護施設は怖いところだ」「親を施設に入れるなんてかわいそう」という刷り込みがなされます。
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