「常識にうるさい人」ほど精神不安定に陥る理由 過剰な「べき論」はやがて自身を窮地に追いやる

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このように、さまざまな刷り込み、思い込みを信じることで動いているのが、私たちが暮らしている社会というものです。こうした刷り込みをいちいち疑っていたら、現代人として暮らしていくことは難しい。刷り込みの世界で生きるのは、ラクなことでもあるのです。

しかし「お金への信用」のように、刷り込みというものは、社会のなかで共有された「一種の幻想」であることも忘れてはならないでしょう。

リストラを機にうつになる人の特徴

繰り返しになりますが、通常の日常生活では、刷り込みを疑わずにいても、そうそう困ることはないでしょう。

しかし、生きていれば刷り込み通りにはいかない現実に、しばしば直面させられます。

たとえば、「男性というものは、会社員として一生懸命働いて、妻子を養っていくべきだ」という思い込みが強すぎる人が、ひとたびリストラにあうと「自分は人生の落伍者だ、生きていく資格がない」と一気に悲観し、うつ病になってしまう。こんなとき、「こんな生き方もある、あんな生き方もある」と頭を切り替えられたら、また前向きに生きられるのですが、「こうあるべき」思考が強いと、立ち直れなくなってしまいます。

この男性は、自分が抱えている刷り込みをまず疑い、別の生き方もあるということを模索するべきなのですが、疑うことを学んでいない日本人は、これが苦手です。

こういう思考をするタイプだと、リストラを恐れるあまり、ブラック企業でどんなきつい労働条件でも、黙って耐えたりするのです。「なんかおかしいぞ?」と思っても、「こうあるべき」の思考が勝って、ストレスフルな環境でも頑張り続けようとする。「こうあるべき」の刷り込みを疑う姿勢がないと、守らなければならないルールや習慣は、どんどん増えていくばかりです。

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