「常識にうるさい人」ほど精神不安定に陥る理由 過剰な「べき論」はやがて自身を窮地に追いやる

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しかし、統計値でみれば介護施設で働く職員ではなく、自宅介護における家族・親族による虐待件数の方が、圧倒的に多くなっています。在宅介護をしている家族の35%が「虐待をしたことがある」と報告した調査もあります。

自分の仕事や育児も抱えた家族が、さらに介護をすることは、たいへんな労力です。介護負担を抱えこみ、ストレスから「うつ状態」になるご家族も、たくさんいます。そうしたストレスが虐待につながる。

ただ、在宅介護のこうした問題がニュースとして報じられることは多くありません。実際には、介護施設の職員による虐待のほうが、「珍しいので」ニュースになるのです。そしてこうしたニュースを見て、「家族による在宅介護が理想。親を施設に入れるなんて人でなし」とした、日本人に昔からしみついた刷り込みが強化されるのです。

現実には、在宅介護に比べてみると、プロフェッショナルである介護施設のほうが圧倒的に質の高い介護をしています。今、高齢者の介護にあたっている世代は、おもに、50代か60代世代です。インターネットを通じて、大量の介護サービスの情報を収集できるはずなのに、いまだに「在宅介護が理想」と信じている。刷り込みの根深さ、厄介さが、よく表れている問題です。

「お金」の価値も刷り込みにすぎない

極端なことを言えば、今の経済社会の中心をになっている「お金」の価値でさえも、刷り込みで成り立っています。

貨幣は、人と人とが価値があると「信じる」ことで成立しているのです。もし現代に原始人がやってきたら、数字を刷った紙と交換するだけで何でも手に入るなんて、とても信じてはもらえないでしょう。

しかし私たちは、通帳に記載されている数字を見るだけで「自分にはお金がある」と信じられます。全財産を直接、札束で見る機会がなくとも、通帳に並んだ数字を、リアルなお金に替えられるものと信じています。

「小森のおばちゃま」の愛称で親しまれた映画評論家の小森和子さんは、「振り込み」を信用せず、テレビ出演のギャラも現金でないと受け取らなかったそうです。小森のおばちゃまは、通帳に並んだ数字を信用していなかったのですね。

お金への信用が崩れると、大きな問題が起こります。たとえば、1927年、衆議院予算委員会で大蔵大臣・片岡直温が「東京渡辺銀行がとうとう破綻を致しました」と間違った情報を発言したため、全国各地で「銀行が危ない」という噂が広がり、取り付け騒ぎが起こり、このことが引き金となり金融恐慌が発生します。このように、信用が少しでも揺らげば、お金の価値などは大きく変わってしまうのです。

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