ノーベル賞学者が「反GAFA」の急先鋒に転じた理由 シリコンバレー御用達の経済学者による反乱
巨大テック企業をめぐる論争についてローマーは、コロンビア大学ロースクールの独禁法研究者で、バイデン政権が連邦取引委員会(FTC)の委員に指名したリナ・カーンのような進歩派の影響に言及する。カーンらは市場支配力そのものを危険と考え、それが働く人々や納入業者、地域社会に及ぼす影響に注視する。
このように社会的公正をカバーする幅広い視座は、ローマーなど多くの経済学者からも関心を集めるようになっている。
ローマー自身の具体的な提案としては、デジタル広告収入に対する累進課税制度の導入がある。主に最大手クラスのインターネット企業を対象とする案で、その主張は次のようなロジックに基づいている。
フェイスブック、グーグル、ユーチューブといったソーシャルメディアの戦略は関心をあおり立てる広告やコンテンツによって利用者のサイト滞在時間を極大化することが基本であり、本質的にデマやヘイトスピーチ、政治的に極端なメッセージを増幅するビジネスモデルになっている——。
したがってデジタル広告に課税するのが適切だ、とローマーは力を込める。ローマーはこうした税制によって、ターゲット広告からサブスクリプション(定額課金)型へとビジネスモデルの転換が進むことを期待しているが、そうならなかったとしても、少なくとも政府が必要な税収を得るのには役立つ。
税には政治的な目標が伴っている
今年2月、メリーランド州は他州に先駆けて、ローマーのデジタル広告税のアイデアを具現化した法案を可決した。コネチカット州やインディアナ州なども同様の案を検討中だ。複数の業界団体は、メリーランド州の立法は州政府による過剰な介入であり違法だとして、法廷に異議を申し立てている。
これに対しローマーは、税という経済政策のツールには、政治的な目標が伴っていると指摘する。
「私は心の底からそう思っているのだが、私たちが現在直面している圧倒的に大きな問題は、民主主義を守ることだ」とローマーは言った。「これは経済効率をはるかに超越した問題なのだ」。 =敬称略=
(執筆:Steve Lohr記者)
(C)2021 The New York Times News Services
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