ノーベル賞学者が「反GAFA」の急先鋒に転じた理由 シリコンバレー御用達の経済学者による反乱

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サンフランシスコのベイエリアに21年にわたって居住。主に大学教授として、まずカリフォルニア大学バークレー校、次にスタンフォード大学に奉職した。カリフォルニア州に住んでいたころ、教育用ソフトウェアの会社を起業し売却したこともある。学術研究ではデータの探索・発見ツールとしてソフトウェアを活用。自らもプログラミング言語「Python(パイソン)」の熟達した使い手となった。

息子のジェフリーはグーグルのソフトウェア・エンジニア。バーナード・カレッジ教授でピュリツァー賞伝記部門のファイナリストに選ばれたこともある妻のキャロライン・ウェーバーは、フェイスブック最高執行責任者(COO)のシェリル・サンドバーグとハーバード大学の元同級生で友人という関係にある。ローマーは巨大テック企業の顧問になったことはないが、多くの友人やかつての研究仲間がそうした会社に勤めている。

「私の好きな人たちに不満を持たれることはしょっちゅうだ」とローマー。

「進歩の格差」を考えるように

10年前にニューヨーク大学に移籍。2018年にノーベル経済学賞の受賞講演を準備する中で、アメリカにおける「進歩の格差」について考えるようになったという。進歩は、経済成長だけでなく、個人および社会の幸福の問題としても扱われるべき問題だ、とローマーは語る。

アメリカで浮上するさまざまな動きに、ローマーは懸念を募らせている。平均寿命の短縮、自殺や薬物の過剰摂取による「絶望死」の増加、25〜54歳という働き盛りの人々の労働参加率の低下、拡大する貧富の格差と不平等などだ。

もちろん、これらの問題の背後にはさまざまな要因がある。が、ローマーは、政府の重要性を軽んじてきた経済学者にも責任の一端があると考えている。ローマーの新たな成長理論は、政府が科学とテクノロジーの進歩に重要な役割を果たしていることを認めるものだったが、その射程は主に基礎研究に対する政府の資金提供にとどまっていた。

当時隆盛を極めた「小さな政府という(思考の)枠」にとらわれてしまっていた、とローマーは振り返る。「進歩の維持に対して政府が果たしている役割を著しく過小評価していた。本当の進歩のためには、悪いことにノーと言える政府が必要だ」。

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