ノーベル賞学者が「反GAFA」の急先鋒に転じた理由 シリコンバレー御用達の経済学者による反乱
こうした経済学者は、検索、ソーシャルメディア、オンライン広告、ネット通販の市場が自由市場の理論どおりに動いていないと考えている。独占または寡占が常態化しているように見えるためだ。
巨大テック企業がますます強大な存在となる中、新たな思考とルールが必要になったと彼らは主張する。その中には、テクノロジー産業寄りだったオバマ政権で重要なポストに就いていた経済学者もいる。そうした人々が今、議会証言や調査報告書を通じて、巨大テック企業を押さえ込もうとしている政策担当者に、規制のアイデアとその理論的な裏付けを与える役割を担うようになっているのだ。
多くが「反トラスト法」の改正案を支持
政策提言は、規制のより厳格な適用、個人情報に対する利用者の選択権拡大、新たな立法など多岐にわたる。多くの経済学者が支持しているのが、民主党の上院議員エイミー・クロブシャー(ミネソタ州選出)が反競争的な合併の規制強化を狙って今年提出した反トラスト法(独占禁止法)改正案だ。
実質的に「被告(企業)びいきの最高裁判所が示した欠陥判断の数々を無効化」することになる法案だと、カリフォルニア大学バークレー校の経済学者カール・シャピロは先日、アメリカ法曹協向けのプレゼンテーションで指摘した。シャピロはオバマ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)の委員だった。
経済学者からは、自社プラットフォームに対する競合他社の公正なアクセス、開かれた技術標準、データを持ち運べるものにすることなど、巨大テック企業に一定の行動規範を順守させる規制枠組みを求める声もあがっている。中でも目立つのが、オバマ政権でCEA委員長を務め、デジタル市場についてイギリス政府の顧問にもなっていたハーバード大学教授のジェイソン・ファーマンだ。
ニューヨーク大学スターン経営大学院の経済学者トマス・フィリポンは、アメリカの企業独占は全体として1世帯当たり月額300ドルの損失をもたらしていると試算する。
このように巨大テック企業に闘いを挑むようになった経済学者は多い。だが、その中でもローマーの名前はおそらく最も意外感が強い。市場原理主義の総本山、シカゴ大学で学士号と博士号を取得しているからだ。そのシカゴ学派のイデオロギーは、反トラスト法判決にも長年影響力を及ぼしてきた。