ノーベル賞学者が「反GAFA」の急先鋒に転じた理由

シリコンバレー御用達の経済学者による反乱

ノーベル経済学賞を受賞したポール・ローマーは一時期、シリコンバレーでとりわけ人気が高い経済学者だったが、現在は規制強化など反GAFAの急先鋒となっている(写真:Caroline Tompkins/The New York Times)

ポール・ローマーはかつてシリコンバレーの人々にとりわけ人気の高い経済学者だった。アイデアこそ現代経済を加速させる燃料——。ノーベル経済学賞受賞にもつながった彼の理論に、富を創出するアイデアの世界的中心地、シリコンバレーの人々は深く共感した。

雑誌『WIRED(ワイアード)』は1990年代にローマーを「テクノロジー時代の経済学者」と呼んだ。ウォール・ストリート・ジャーナルはテクノロジー業界がローマーを「ロックスターのように」もてはやしていると伝えた。

テック企業が新しいアイデアの循環を阻害

だが、状況は一変した。

65歳になったローマーは今でも科学とテクノロジーが進歩の原動力になると信じているが、その一方では巨大テクノロジー企業に強烈な批判を浴びせるようになっている。巨大テック企業が新しいアイデアの循環を阻害しているというのだ。ローマーは、フェイスブックやグーグルなどのデジタル広告収入に新たな州税を課すよう主張。メリーランド州が今年、こうした税の導入に踏み切った。

ローマーの矛先は自身を含む経済学者にも向けられている。経済学者が放任的な政策や裁判所の判決に知的な正当性を与えたがゆえに、「競争の崩壊」とローマーが呼ぶ状態にテクノロジー産業が陥るようになったという批判である。

「『市場とはそういうものだ。われわれにできることは何もない』と経済学者は教えていた」とローマーは言う。「実際には、これは大きな間違いだった」。

現在のローマーは政府に積極介入を呼びかけるようになっているが、これは少し前に「自らの思考に起きた重大な変化」を反映したものだという。ローマーの立ち位置の変化は、テクノロジー業界と政府の規制をめぐって有力な経済学学者の間に広がる再考の動きとも呼応する。

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