親がわが子を受験戦争から撤退させられない理由 シンガポール政府の目玉改革への親たちの本音

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シンガポールの子どもたちはどのような勉強の仕方をしているのだろうか。親たちは競争についてどう考えているのだろうか。現地の親たちにインタビューをし、その実態と胸の内について探った。

自分たちの頃よりも「勉強が難しい」

シンガポールの子どもたちの勉強は、多くの場合、就学前からはじまる。就学前教育は、小学校からの義務教育が原則公立であるのと異なり、民間企業による運営も認められている。それもあり、遊びを中心にする園やモンテッソーリをうたっている園など多様性がある。

しかし、多くのローカル園では、年中にあたるK1(Kindergarten1)ごろから読み書きや計算などの学習を開始する。中には、中国語や算数で小テストを実施し、テストの点数と順位を貼り出している園もある。通わせている園が「緩すぎる」「小学校の準備をしてくれるところがいい」と転園させる親も珍しくない。

小規模塾の中には、公文、七田式など日本からのものも(写真:筆者撮影)

園だけではない。シンガポールの街中は、少し歩けば算数や中国語の小規模塾であふれている。現地新聞The Straits Times(2019.9.11 “Tuition is not an educational end”.)によると、2012年に700カ所だった塾・習い事等の学校外教育施設は2019年時点で950カ所に増加。

親がかけるお金も増えており、Household Expenditure Survey (HES) によれば、2007年には親が大卒の家庭が塾・家庭教師にかける金額は月平均143シンガポールドルだったのが、2017年には186シンガポールドル(約1万5000円)に上がっている。

背景には、親世代の子ども時代に比べ、「今の子どもたちが勉強する内容が難しくなっている」という認識があるようだ。

外資系金融機関で働く中華系のEvelynさん(仮名)は、インタビュー時点で息子が小学3年生だったが、「私は塾に行ったことはなく、放課後はテレビを見て、遊んで過ごしていたけど、息子は塾に行ってるし、私たちの時代より競争は激しくなってる。たとえば私の頃は小学1年生だったらリンゴとかバナナとかシンプルな英単語を書いていた記憶がある。でも息子が小学1年生のときはストーリーを書くことが求められる」と話す。

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