野村もSBIも参入「デジタル有価証券」の新潮流 国内初が相次ぐSTOは証券界に大変化をもたらす
株券電子化以来の大変化――。2021年はその起点の年だったと振り返ることになりそうだ。
「国内初となる一般投資家向けSTOを実施する」。4月19日、SBIホールディングス(HD)傘下のSBI証券は社債をセキュリティトークンオファリング(STO)形式で発行すると発表した。公募で個人投資家が購入できるSTOは国内初の取り組みだ。
SBIHDの北尾吉孝社長4月28日に開いた決算会見で「国内株式以外の商品でほか(の証券会社)と1番差別化できるのがデジタル証券。STOをどんどん盛んにしていけば、引受でウチが圧倒的になる。流通市場もウチが整備していけば、なかなかほかの証券会社は付いてこられないでしょう」と自信満々に語った。
これまでSTOを活用した社債発行は、金融機関の実験的な取り組みにとどまってきた。すでに野村総合研究所はじめ、三井住友信託銀行や大和証券グループ本社などが実施してきたが、いずれも募集人数を限定した私募の形式だった。
活用は社債や株のほかにも
セキュリティトークン(デジタル有価証券,ST)は分散台帳(ブロックチェーン)技術を使っている点で暗号資産(仮想通貨)と同じだが、不動産や企業の信用力など、裏付けとなる資産がある点で暗号資産とは異なる。
ブロックチェーン技術の活用で売買の情報を瞬時に記録し、参加者が相互に取引を承認しあうことから、証券保管振替機構のような第三者が介在する必要がなく、発行体は保有者情報の管理コストを大幅に下げられる。社債のほかにも、不動産持ち分やアート作品、ウィスキーなどさまざまな資産の証券化でSTの活用が検討されている。
有価証券の管理コストが下がると、従来の発行に比べて小口での発行が可能になり、個人投資家にとっても投資をしやすくなるというメリットが生まれる。
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