野村もSBIも参入「デジタル有価証券」の新潮流 国内初が相次ぐSTOは証券界に大変化をもたらす

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実験的な取り組みも含めて国内でも発行実績が増えつつあるSTOだが、課題は残っている。

3月29日の「国際金融都市OSAKA推進委員会」設立総会で、大阪府知事などを前に取引所について熱弁する北尾社長(右から2番目)

日本国内には先行するシンガポールのようなSTの取引所がなく、購入後の売買が難しいからだ。現状、STの取扱計画を具体的に示している取引所は、SBIグループとSMBCグループが計画している「大阪デジタルエクスチェンジ」のみで、STの取引開始は早くても2025年になる見込みだ。

個人投資家は社債でSTOの案件が増えれば買いやすくなるが、しばらくはSTの取引市場が存在しないため、証券会社と相対で売買する状態が続くことになる。

STOが多様化する可能性

それでも、次世代の有価証券管理を担う仕組みとして、公募のSTOは今後も続きそうだ。目下、準大手証券の東海東京フィナンシャル・ホールディングスが個人投資家向けに公募のSTOを準備している。第1号案件は不動産を裏付けにした発行になる計画で、国内初の社債以外を対象とした公募のSTOだという。

対象だけではなく発行体の多様化も進む。2020年2月にはみずほフィナンシャルグループがヤマダ電機、オリエントコーポレーション、ファミリーマートなどとともにデジタル社債発行の実証実験を行った。こうした企業が公募のSTOを行う可能性もある。

STに紐づける資産が多様化し、さまざまな業種の企業が発行を行えば、STOへの注目度がいっそう高まるだろう。いずれにしても、本当のメリットが広く投資家に認識されるためには、日本におけるSTの取引所開設が欠かせない。

梅垣 勇人 東洋経済 記者

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うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

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