野村もSBIも参入「デジタル有価証券」の新潮流 国内初が相次ぐSTOは証券界に大変化をもたらす

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とくにSTで投資環境が大きく変わりうるのが社債だ。基本的に証券会社が売買の相手になる現在の個人投資家向けの社債発行は、投資家が増えるほど管理コストが膨らむ。費用が増えると発行体が証券会社に支払う手数料も増えるため、小口の発行は敬遠されてきた。

SBI証券が実施するSTOの場合、発行額は1億円で、10万円単位で投資ができる。100万円単位が多かった従来型の社債発行よりも小口だ。「将来的には100円単位の発行も可能」(証券会社幹部)といわれる。

現状、個人向け社債は満期保有が基本で、中途での売却がほとんど想定されていない。日本証券業協会が個人向け社債などの店頭気配情報(価格)を1日1回公表しているが、株式でいう東京証券取引所のような取引市場が存在せず、実際に社債を売買するまで値付けがどうなるのかわからない。

だが、STで有価証券の売買の管理がしやすくなると、社債でも株式のように2次流通の市場が発展し、個人投資家が気軽に売買を行えるようになる可能性がある。

「持ち主」がわかるメリット

発行体側にもメリットがある。とくに恩恵が大きいとされるのは社債など債券の管理だ。

証券保管振替機構によって持ち主が管理されている上場株式とは違い、社債などの債券は、1人目の保有者が転売した場合、発行体が2人目以降の保有者を知る手段がほとんどない。

例えば10年満期の社債ならば、一度、証券会社を通じた売買が行われると、発行体は10年後に満期になって償還されるまで誰が持ち主なのかわからない(2021年1月から需要・販売額が10億円以上の場合のみ主幹事証券が発行体に通知)。

しかし、STOを使って社債を発行すれば、リアルタイムで誰がどれだけの社債を持っているのかを把握できる。この情報から、社債の保有者向けにも、株主優待と同じような特典を付与することができる。また大口投資家を把握できれば、必要に応じて企業側からアプローチして対話することも可能だ。

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