SBIの「宣言」で曲がり角を迎えたネット証券 手数料の無料化でこれからどう生き残るのか
「つまらん小細工をするんやったら、ちょっと懲らしめてやろう」。1月31日に開かれたSBIホールディングスの第3四半期決算説明会。北尾吉孝社長の舌鋒は、手数料を引き下げる代わりに信用取引の金利を上げた競合他社に向けられた。
株式や投資信託の手数料におけるネット証券各社の引き下げ競争が新展開を迎えている。事の発端は北尾氏の発言にあった。昨年10月末の中間決算説明会で、「3カ年計画で手数料をゼロにする」とぶち上げたのだ。
この宣言から約1カ月後の12月初旬には、auカブコム証券と松井証券が信用取引の手数料無料化と投信の販売手数料無料化をそれぞれ発表。他社も追随し、「無料化発表合戦」の様相を呈している。
危機感をにじませるネット証券各社
手数料無料化はネット証券の収益を最大5割減少させ、事業を赤字に転落させるだけのインパクトがある。本誌は無料化に揺れる大手ネット証券の5社首脳を直撃。社長らの口からは「これは遊びやゲームではない」「合従連衡もありえる」「本当の第二の創業」といった危機感のにじむ言葉が飛び出した。
そもそも証券会社が得ている手数料とは何か。上場企業の株式を購入する場合、投資家は、取引所が認めた「取引参加者」である証券会社に注文を仲介してもらう必要がある。その際に投資家が証券会社に支払うのが株式の委託手数料だ。
営業社員が直接顧客に対応する対面証券では委託手数料が高い。最大手の野村証券では、約定代金が20万~50万円の場合1.43%。それに対して、人が介在しないネット証券は相対的に安い。SBI証券だと約定代金が20万~50万円の場合、1注文につき275円(スタンダードプラン)。率にすると約0.13~0.05%となる。
この株式委託手数料は1999年まで固定だったが、金融ビッグバンの一環として自由化された。手数料自由化とインターネット普及の波に乗って、従来型で手数料の高い対面証券から顧客を奪い、勢力を拡大してきたのがネット証券だ。
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