SBIの「宣言」で曲がり角を迎えたネット証券 手数料の無料化でこれからどう生き残るのか
だが、対面証券の顧客層は70代前後が中心。そのような高齢者にリスクを伴う信用取引のニーズがあるかどうか疑問は残る。
一方、信用取引以外では、資産形成層の取り込みに注力する。月間約5000ある新規口座のうち約半数が投資初心者だが、これをさらに増やす。「松井は敷居が高そうという調査結果も踏まえて、初心者にも手厚いことを伝えたい」(和里田専務)。
就職・結婚や出産などを契機に投資を始めてもらえるよう、子育てメディアの「キズナ」や女性向けの健康管理アプリ「ルナルナ」と提携。今期は広告宣伝費を前期比25%増とし、「不安はぜんぶ、松井にぶつけろ」というキャッチコピーで広告出稿も増やしている。
「本当の第二の創業」
本業の強化に取り組む松井証券と対照的なのが、マネックスグループだ。
同社の松本大社長は、手数料無料化の動きについて「追随していく。ただ先には行かないし、様子見でもない」と冷静だ。
マネックス傘下の米国証券子会社では、すでに手数料無料化を実現。だが「ペイメント・フォー・オーダーフロー(取引所への注文回送手数料)などの代替となる収入源があるアメリカとは違い、現物は日本では簡単に無料にならないのではないか」と予想する。
しかし、顧客の注文を取り次いで手数料を受け取るという、従来のブローカーサービスモデルの先行きに対する危機感は強い。そこで松本氏は「アセットマネジメントサービスモデルへ移行する」と昨年10月末の中間決算会見で宣言。さらに今年1月16日に運用会社の設立を発表した。
新しく設立する「カタリスト投資顧問」では、日本株を中心にアクティブ運用(日経平均株価やTOPIXなどのインデックスの成長率を上回る運用成績を目指す資産運用)を行う。
松本氏いわく、「手数料ゼロでも資産が増えなければ、顧客に価値を提供しているとは言えない」。新会社では、高い運用成績を実現することで、その対価としての手数料の獲得を狙う。
今後は運用部門に専念するため、子会社・マネックス証券の代表権を手放した。他社からは「松本さんはマネックス証券を手放すつもりなのではないか」とまで噂されるほどだが、「それは絶対にありえない」と一笑に付す。ただ、「今回が本当の第二の創業」と、3年前に行った「第二の創業」宣言を持ち出すほどの力の入れようだ。
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