SBIの「宣言」で曲がり角を迎えたネット証券

手数料の無料化でこれからどう生き残るのか

一方、代替となる収入源がない現物取引では、委託手数料を無料にすると、取引が増えるほど損することになる。現在は投資家が負担する取引所に支払う手数料を、自社の持ち出しで捻出することになるからだ。

10年前との比較で、各社は委託手数料への依存度を引き下げている。が、手数料依存度がいちばん低い楽天でも依然2割を占めており、今すぐに手数料収入を失えば、赤字に転落する可能性が高い。こうした収益影響の大きさが楠氏の危機感につながっている。

手数料依存度が高いほど、無料化による影響は大きい。収益の47%を株式の委託手数料に依存する松井証券は、他社以上に構造改革が必要だ。

松井証券はどうする?

和里田聰・松井証券専務は、「手数料の引き下げは、やるしかないという状況。手数料に依存する収益構造を変える」と、現状を分析する。

足元の手数料ゼロへの対応として、他社に先行し投信の販売手数料を無料化した。この真意を聞くと、目的は他社の牽制効果にあった。「他社の収益力を落とせば彼らも手数料への依存度が高まる。追随したSBIや楽天は(年間収益で)20億円失ったはず。当社はほぼ影響がない」。

ただし、必須となる代替収益源の確保には松井特有の足かせがある。約20年前に松井道夫社長の下、対面のビジネスモデルを否定してネット証券に転身し、成長してきた。IFAのような対面チャネルに「今さら先祖返りはできない」のだ。

そこで「預かり資産を増やし、とくに信用取引の活用をもっと広めていく。いかに現物のお客さんを信用取引の顧客にできるかが課題だ」と和里田氏は話す。

信用取引では、投資家が現金や株式を担保に証券会社から資金を借り、手元にある資金よりも多くの株式を売買する。投資家は証券会社から資金を借りるために金利を支払う。

松井が狙うのは、この金利収入の増加だ。既存顧客に信用取引を利用してもらうことに加えて、「何よりも重要なのは対面証券からの顧客獲得。対面とウチの両方に口座がある人の移動はまだ見込める。信用取引は株価が下がる局面でも有効なので勧めたい」。

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