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積極財政派も財政規律派も説明できていない「政府が赤字で債務が増えても大丈夫だった理由」とは?戦時の経験そして現代

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北アルプスの大キレット
日本の隘路(写真:kei/ PIXTA)

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高市政権の「責任ある積極財政」で焦点となる財政指標の1つが、プライマリーバランス(PB)だ。昨年11月の衆院予算委員会で、単年度のPB黒字化目標を取り下げ、数年単位で確認するよう見直すと表明。批判と歓迎の声が交錯した。
『財政規律とマクロ経済ー規律の棚上げと遵守の対立をこえて』で戦中・敗戦直後の財政顛末をたどった齊藤誠・国学院大学教授が、この指標をめぐる対立を読み解く。

プライマリー・バランス(PB)という言葉に出くわすと、議論がどうしてもこんがらがってしまう。

政府のPBとは、政府が税や保険料で手にする収入から、政府の利払い費を除く財政支出を差し引いたものである。その差し引きがプラス(黒字)になれば、政府の抱える借金の元利返済に充てられ借金は縮小していく。一方、その差し引きがマイナス(赤字)になれば、返済どころか借金が重ねられるので債務はふくらんでいく。

財政規律を重んじる人びとはPBの赤字に警戒をし、積極財政を支持する人びとはPBの黒字にこだわる必要がないという。

しかし、それから先になると、議論がますますややこしくなる。

財政規律派は、「PBを黒字にしないと、金利の急騰や物価の高騰に見舞われる」という。一方、積極財政派は、「PBがこれ(・・)まで(・・)()ずっと赤字で借金がふくらんできても、金利急騰も物価高騰も起きなかった。だから、これから(・・・・)()大丈夫」という。

ただ、財政規律派と積極財政派のあいだの対立するやりとりを聞いていても、多くの人びとは、どちらが正しいのかよくわからないというのが正直な思いではないであろうか。

そこで、本稿では、ずいぶんと回り道をして、両派の決着点を見いだしてみよう。

だれが政府の「借りっぱなし」を支えてきたのか

ところで、政府のPBがこれまで赤字続きだったということは、政府が元利返済を怠って借金を「借りっぱなし」にしてきたことになる。また、政府は今後もPB黒字化にこだわらないようなので、いぜんとして「借りっぱなし」を続ける意向なのであろう。

ここで大きな疑問が生じる。だれが、「借りっぱなし」意向の政府にカネを貸すのであろうか?

「いずれは返済される」債務であれば、返済期日と利息次第では、それを引き受ける債権者があらわれるであろう。より正確にいうと、そんな律儀な債務者に対して計算ずくの債権者が応じられるように、返済期日と利息が決まってくる。

一方、これまで「借りっぱなし」にしてきて、これからも「借りっぱなし」にすると公言してはばからない不義理な債務者に対して、損得ずくの債権者が登場するとはなかなか考えにくい。

しかし、不義理な借り手である政府の債務を引き受ける債権者が、なんと出現するという大変に特異な事態が、第2次世界大戦中と異次元金融緩和の日本経済において起きたのである。

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