一方で、「就業者から失業者へ(E⇒U)」の遷移確率はいわば「失業のしやすさ」を示す。この遷移確率を見ると、リーマンショック時と比べて上昇幅が抑制されていることがわかる。つまり政策効果が大きいのだ。
まとめると、雇用調整助成金の特例措置などによって「失業のしやすさ」が抑制され、失業率はあまり悪化しなかったが、「就職のしやすさ」は悪化が止まっておらず、労働市場の状態は非常に弱いものであることがわかった。
各種政策の縮小には慎重さが求められる
このような状況では、失業率の上昇が止まっていることだけを理由に各種政策対応をやめてしまった場合には、予想外の失業率の上昇を招くだろう。
ここで、政策対応を停止させた場合を想定し「就業者⇒失業者(E⇒U)」の遷移確率がリーマンショック時のレベル、すなわちプラス0.11%ポイント悪化した場合の失業率の変化を試算すると、失業者の増加に伴って失業率は3.4%程度まで緩やかに上昇していくことになる。現在の失業率が3.0%なので、約30万人の失業者の増加となる。
財源の問題や、労働者の移転がスムーズに進まないという問題はあるものの、各種政策対応はかなりゆっくりと行う必要があるといえよう。
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